朝日が登るまで
相変わらず短い小説ですが、どうぞお楽しみ下さい。
年末恒例の大型歌番組の途中、俺はどうやら眠ってしまったらしい。
「AM5:00、もうすぐ朝か」
テレビの音が耳に入ってくるのが不快だった。
つけっぱなしで寝てしまったこたつの温もりは好き。
ただ、喉が痛い。
外はもう真っ暗ではなく薄暗い程度までになっている。それを見た時に、ふと思った。
「朝日が見たいな」
思うと行動は早い。こたつで寝たせいだろう、体がだるいがそんな事は障害にならない。
温かいこたつから寒い部屋へ飛び出すと、上着を羽織り、二階へ急いだ。
廊下の床も冷たい。足の裏が廊下の冷たさでビリビリと痛い。
「靴下履いてくれば良かった」
多少の後悔があったが屋根に出る事の出来る窓の前に立つと、思い切って開け放った。
その瞬間身を切るような寒さが俺の体を通り過ぎた。
体が小さく震える。真冬の朝の空気は本当に冷たい。
それでも朝日を見るべく屋根に移動し、そのまた上の屋根によじ登る。
屋根の真ん中に立って朝の景色を見ると、辺り一面もやが包み込んで意外にも神秘的なものだった。
そう言えば子供の頃も同じ事をしていた。そしてその時も、この光景に痛く感動した。
いつから忘れていたのだろうか?あの時は絶対に忘れないと決めたはずなのに、時が起てばどうでも良くなってしまう事は多い。
それだけ俺はいい加減な人間なのだ。他の人もそうだと言われても、他人がそうだからと言って自分も同じでいいやと言うのは嫌いだ。
はっきりと自分を持っていたい。
この事を思い出させてくれただけでも今日はいい日だ。
過去の自分を、今の自分と重ね合わせている内に辺りは真っ赤な光に包まれ始めている。
「ああ、これだ」
俺が見たかったのは、世界を真っ赤に染めながら、遠くの街からゆっくりと顔を出す、この朝日だ。
それからしばらく俺は眺めていた。どこか懐かしい、とても寒い真冬の朝に、温かな光で俺を照らしてくれるその朝日を。