第6章
(俺は…いったい何者なんだ……?)
鬼影が逝ってしまったあと、学然は湖のほとりで空を見上げていた。
様子がおかしい学然を心配して、雲隠もついてこようとしたが、それを断った。
今はただ1人になりたかった。
冴え冴えとした月が、長く天に向かって伸びた竹の間から姿を見せている。
今宵の月はいつもに増して青みを増して冴え冴えとしているように見えた。まるで、今の自分の心を表しているかのようだ。
どこかが凍ってしまっている。
厚い厚い氷に閉ざされて、決して融けることがない。
その奥には、決して忘れてはいけないことがあるような気がするのに。
ここに来る前、自分はどこで何をしていた?
何のためにここに来た?
思い出そうとしても、氷の奥に眠っている記憶は戻らない。
――お前がいるべきところはそこじゃない――
ぐいと締め付けられる胸。
では、自分がいるべきところは……どこだ?
自分はいったいどこにいるべきで、どこに行くべきなんだ?
――お前は俺と同じだ――
何が鬼影と同じなんだ?
記憶が抜けている、というところがか?
だが、それなら最後に記憶を取り戻した鬼影が、わざわざそんなことを言うことはないだろう。
であれば、彼は一体何を伝えたかったのだ?
彼が最後に言った言葉は、学然にとって、とても大切なことのように思えた。
しかし、それが何なのかが、まったくわからない。糸口さえ見つからない。
「う……」
思い出そうとすると、割れるような痛みが頭を襲う。
学然は膝をつき、両手で頭を抱え込んだ。
思イ出スナ。
思イ出セ。
相反する言葉があふれる。
(やめてくれ……俺は……このまま「ここ」に……)
「ここにいたいんだ!」
ついて出た言葉に目を見開く。
この言葉が何を示すのかもわからず、学然は呆然とその場に立ち尽くしかなかった――。