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【4話】ピンチはあっという間に

 寝坊か? あのエーリヤが? いてもたってもいられなくなりドアに手をかけた。視界にはやはり気が遠くなりそうに思える程広い廊下が映る、またドアを閉めようとしたがエーリヤに何かあったのではないかと思うと俺は一呼吸をおいて部屋から出た。

 ただでさえ広い城の中だというのに一人だともっと広く感じた。目に映るドアを一つずつノックをして部屋を覗く、片付いた部屋、窓がなく暗い部屋、外側のドアに鍵が着いている部屋、色々見たがどこにもエーリヤはいなかった。途中メイドの人と出会いエーリヤが行きそうな場所を聞き調理場へと案内してもらった。

 とても広いキッチンだ、コンロが沢山あって、業務用だろうかとても大きな冷蔵庫も確認できたがエーリヤはいなかったそれに加え調理の準備をしている痕跡すらなかった。他に行くあてがないかを聞いてみると、書室や庭等を案内してもらった。改めてエーリヤの凄さを実感していたが、やはりエーリヤはどこにもいなかったそして最後にノアの部屋の前まで来てメイドの人と別れた。

 俺は止まっていた正直行きたくなかったがもしかしたらと願いすがる思いでドアを開けた。そこにはノアが椅子に座り机に向かって書類を書いていた姿があった、ノア相変わらずこちらに目を向けることはなく「クオ殿、要件は?」書類を見ながら俺に言うやっぱりこいつの事は苦手だ、相変わらず無表情すぎるし無愛想だ、顔をしかめたくなるのを抑え「エーリヤがどこにも居なくて、あんたなら知っているのかと」と俺は聞くと、作業を続けながら「来てもいないし、見かけてもいないな」と答えた。ここにすら来ていなくて、こいつが見かけてもいないのなら一体どこに、やっぱり何かあったのじゃないかと俺は焦りだしてきた。癪だったが俺よりもノアの方がこの世界に詳しく、一人で探すよりも効率がいい事から俺はノアに協力を願うためにエーリヤがどこにもいない事を説明した。しかしノアの口からはおぞましい返答が帰ってきた「断る」

  自分の耳がおかしくなったのかと思った、俺は思わず聞き返してしまった「......今なんて言ったんだ」ふつふつと湧き出す怒りを抑えていた、しかしあっさりとノアは同じ事を繰り返した「断ると言ったんだ」ノアはため息をつき、続いて「この件は彼女の独断なのだろう? これはエーリヤが自分で考え行動した結果だ、だから自分で考え動き行動することは嫌いなんだ」あまりにも冷たく、他人事すぎる物言いで俺はとっくに我慢の限界を迎えていた、そんな時にふと昨日の彼女とのやり取りを思い出す『こんな私でもノア様や誰かの役に立てたらすごく嬉しいんです』あの笑顔と声が響く、結局俺は机を思いっきり叩いてしまった、想定外だったのであろうノアは驚き一瞬俺の方を見た、その一瞬を俺は逃さずに左手でノアの襟元を掴み無理やり顔をこちらに向けた。ノアはしばらく驚いていたがすぐにまたいつもの無表情になり、何も言うこともする事もなくただ見つめていた。怒りで震える声で俺は「相変らずだなお前は」と右手に力をグッと込めていた。書類は舞い散り、瓶は倒れその瓶からはインクが漏れ、書類は黒く染まっていった。

 肩を震わせ声を絞り出す「頼むよ協力しなくてもいい、行くあてでも教えてくれ」しばらくしてノアは静かに口を開き「城を出てずっと左に進むと森が見えてくる、エーリヤはよくそこで薬草を取ってくる」とだけ答えてくれた。俺は手を離し「......悪かった」とだけ言って走り出した。

 俺は城を抜けとにかく走った、遠くからでも分かるほど木々が生い茂る森へと、横目で楽しそうな賑わいが聞こえる街を眺めていた、いつかエーリヤと行けたらだなんて甘い理想がチラついた。

 森の中は暗く、昼だというのに常に真夜中のようだった、道無き道を進み続ける。こんな森の中を女の子一人で? 焦りと不安が募っていく、かなり歩いたであろう疲れが溜まってきて足取りが重くなっていくのを感じる正直心が折れそうだった、だがエーリヤの方がエーリヤはもっと辛いと考え歩き続けた。

 そんな時遠くの方で女性の声が聞こえたきがした、確証も何もなかったが俺は声の方へ走り出したそこにはエーリヤとこちらに背を向けた三人の子供がいた。良かった生きていたと俺は安堵し近づいた「エーリ......」と声をかけようとしたが目に映った異質さに言葉を失ってしまった。

 エーリヤの服はボロボロで拘束されていたのだ、三人の子供だと思っていたそれは魔物と呼ばれるそれだった、だって耳が俺と同じで尖って体が緑がかっていてまるで俺とそっくりだった。だが体は小さくおそらくゴブリンなのだろうと俺は考えた。

 エーリヤは真っ先に俺に気づいて震える声で「だ......駄目です来ないで......早く逃げてください」と言った。魔物共はゆっくりとこちらに振り返り耳障りな声で話し出す「オマエ、オレラオナジ」「オナジ、クワワレ」ギィギィとやかましくゴブリン共は騒いでいた、加わる?加わるってこんな悪趣味な事に?エーリヤはとても怯え今にも泣き出しそうだった。俺は少し考えてからゆっくりとゴブリン共の方に近づき右手にグッと力を込め、そして――思い切り力を込めエーリヤの上に馬乗りになっているゴブリンの頬を殴り飛ばした。「ギィギャ!?」殴られたゴブリンは森の奥の方へと吹き飛んで行った。すげぇこんなに馬鹿力なら何でも出来るんじゃないかと思えた、二匹のゴブリンは呆気に取られていたが俺が味方では無い事を理解すると「ヒキョウ」「オナジナクセニ」と怒りをあらわにしていた。「はっ! 卑怯で結構」 ただ今ので分かってしまった、俺はただの力が少し強いだけのオークだと、何のチートも特別な力も持ち合わせていないただのオークだ。

 突然「クオ様後ろ!」エーリヤが叫んでくれたが間に合わず、振り返った瞬間に顔に強い衝撃を受け俺の仮面は二つに割れ地面に落ちた、揺れる視界で何とかゴブリン共を見ていると手には剣が握られていた。どういう事だ? なんでゴブリンなんかが剣を持っているんだ普通棍棒とかだろ、いやそんな事より仮面が駄目になったエーリヤに顔を見られる訳にはいかない、俺はフードをもっと深く被り二匹のゴブリンの位置を確認し殴りかかろうとした、だがゴブリン共はいとも簡単にそれをかわし容赦なく俺を斬りつけてきたフードも肌もボロボロになり赤い血が滲んできた、ああ俺の血も赤色なんだな、現実逃避からか呑気な感想が浮かんでくる、このまま素手のままでは勝ち目は無いので何を考えたのか俺は剣を奪い取ろうと刃先を握ったがあまりにの痛さにすぐに手を離してしまった。当然の結果だ、オークだからいけるなんて確証もないのに本当に馬鹿だ、簡単に肉が裂けどんどん奥の方へと刃がくい込んでいき......いや思い出すだけでも痛くなってくる、右手からは血が流れ出し俺はじわじわと近づく死を感じていた。分かっていたかっこよくない事も何をしても駄目なことも、分かっていた分かっていたけどでもせめて、せめてエーリヤだけは守りたかった。エーリヤは泣き叫びながら「やめてください! クオ様を傷つけないでください! 私ならどうなっても構いませんから!」悲痛な叫びが聞こえる、それなのに俺の目は静かに閉じてしまった。神を恨んだ。何故俺は人間じゃなくオークだというのに特別な力も何もないのかとこんな時にヒーローがいたらな。

 しばらく目を閉じたままでいたが、何事も起きなかったためゆっくりと目を開けるとそこには、マントをなびかせ剣を握りこちらに背を向けたヒーロー......いや騎士が立っていた。


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