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六十二話 精神修行研修七日目――最終日

 精神修行研修七日目。つまり、最終日。


「おう! てめぇら! 昨日の自然薯祭り良かったぜ。お好み焼きに、バター醬油焼き、とろろめし…………美味かったな! それと、名巣! 糸! てめぇら何回か脱走したみてぇじゃねぇか! あんだけ言ったのに、脱走するたぁいい度胸だ……! この後、ハリセンでしばき回してやるよ……!」


 最上がハリセンを用意し、ギラギラした目で名巣と糸を見据える。


「違うの! それはドッペルゲンガーだわ……! あちきは怪奇現象が気になって外に出たりなんてしてないわ!」


 名巣が震えつつ声を出す。ただし、目が空中をさまよっているが……。


「わ、私は……そのぉ、何回か脱走しました…………。すみません……」


 糸は一瞬、言い訳しそうな気配を見せるも、すぐに観念したように頭を下げる。


「い、糸ちゃん……! そんなこと言ったら…………」


 名巣が慌てて声を出す。


「そんなこと言ったら……?」


 最上が名巣に一歩大股で近づき、問いかける。


「あ……。……昨日に脱走したのは、あちきだけよ! 糸ちゃんは脱走してないわ!」


 名巣は意を決したように、更に嘘を重ねる……。


「名巣ぅ……。てめぇよく、何度も嘘つけるな……。……まあでも、後輩を思って自分が罪かぶったのは驚きだ。全然よくねぇことだけどな……!」


 最上が呆れつつも、最後に声量を上げる。


「はい! あちきはとんだ嘘つき女だわ! でも、糸ちゃんはあちきが無理やり誘ったから、ハリセンはやめてあげて!」


 名巣はすがるように、頼み込む。


「てめぇなぁ……。そう思うなら、脱走すんな! ったく……まあいい。ハリセンは名巣だけで勘弁してやる。今日は精神修行研修の最終日……。最後の課題だ……」


 最上は、言葉を途中で切る。


「最後の課題は…………?」


 澄華が最上の言葉を復唱する。


「目一杯楽しめ! 今までの修行でてめぇらは、酷獄島に来る前とは心身共に気構えが変わってるはずだ……! あとは、今まで頑張った自分をいたわるんだ! それで、精神修行研修は完了だ!」


 最上がニカっと歯を見せて笑う。


 その場にいた全員から喜びの歓声が上がる。


「名巣、てめぇは普通にハリセンだ……」


 最上が目を細めて淡々と伝える。


「今の流れなら、なしでもいいのでは……」


 名巣が悲しげに呟く。


「いや……ダメなもんはダメだろ……」


 最上が何当然に文句言ってるんだ、という顔をする。


「あ、あの! 私もハリセンでしばかれます! 私も脱走しようとしたので……」


 糸が一歩前に出つつ、震えながら言葉にする。


「糸ちゃん…………。あちきはなんて良い後輩を持ったの……」


 名巣が泣きそうな顔をする。


「糸ぉ……。てめぇはいい。名巣の顔潰してやるな」


 最上がポンポンと糸の肩を叩く。


「え……?」


 名巣が素で疑問をそのまま口から零す。


「糸、てめぇは良い先輩を持ったよ。基本ろくでもないオカルトピエロだけどな」


 最上が快活な笑顔を作る。


「え……。あ~、そうね。あちきは良い先輩だから。糸ちゃん! 気にせず自分をいたわって!」


 名巣がウィンクする。

 ……普段ウィンクし慣れていないのか、左の顔面だけ潰れたようになっているが……。


「名巣先輩……。私、名巣先輩の分も自分をいたわります!」


 糸が日本語として正しいのか、よくわからない返答を感動した面持おももちで行う。


「よし! んじゃあ、今から自由行動だ! 海でも山でも川でも自由に過ごしていいぞ! 何かあったら、発信機で知らせろ! 走って向かってやるからよ!」


 最上は発信機の親機を振りながら、豪快に笑う。


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