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五十七話 ドキドキ肝試し③

「え? この状況で⁉ そんなことより、早く封霊石を回収しましょうよ!」


 澄華は怒り半分、驚き半分といった口調だ。


「会長……。まさか、一人でいるのが怖いんですか~?」


 白百合がやんわりと挑発するように言葉にする。


「そ、そんな訳ないでしょ⁉ 一人でも大丈夫よ! 行くなら行きなさい! その代わり、できるだけ早く戻ること! さっさと肝試しなんて終わらせた方がいいに決まってるんだから!」


 澄華はプンスカと擬音が聞こえそうな様子だ。


「それじゃあ、お言葉に甘えて~。青山先輩ちょっとこっち来てください」


 白百合は理人の手を引き、澄華から数十メートル離れた林に連れて行く。




「えっと……。肝試し中に話したいことって何すか? まさか、会長もドッペルゲンガーだとか⁉」


 理人は疑心暗鬼が心に育っているのを感じる。


「え~と、それはわからないです~。でも、さっきドッペルゲンガーを見破ってたので、違う気がします~」


 白百合はゆっくりと意見を述べる。


「あ、そっか。じゃあ、大丈夫かな。……で話ってのは何っすか?」


 理人は素朴に疑問を尋ねる。


「それは……。ずっと聞きたかったことがあるんです。青山先輩は私のことどう思ってますか?」


 白百合は頬を桃色に染めつつ言葉を紡ぐ。


「え? どうって、すごく良い子だなって思ってるっすよ。柴助さんとも、糸ちゃんともみんなと仲が良いし。色々、助けてもらってるっすからね!」


 理人は笑顔を向ける。


「それは、友達としてですか? それとも……」




 そこまで話したところで、四足歩行になった白百合が駆け寄ってくる。


「理人! そいつは偽物ワン! がるるるる……」


 白百合……に守護霊憑依した柴助が威嚇する。


「あらあら、もう少しであなたの聞きたかった答えが聞けそうだったのに……。さっきといい、タイミングが良いんだか悪いんだか……」


 先ほどまで一緒にいた白百合……ドッペルゲンガーの白百合が呆れたように声を出す。


「ええ⁉ 白百合さんもドッペルゲンガーだったんすか⁉ もう何が何だか……」


 理人は思わず頭を抱える。


「白百合の姿で勝手なことをするなワン! 噛みついてやるワン! ……ん? 白百合もお前に言いたいことがあるみたいワン。入れ替わるからちょっと待ってろワン!」


 白百合の身体から柴助がゆっくりと出ていく。


「……私怒ってます……。私の姿をして勝手なことしないでください……」


 白百合はいつものおっとりした雰囲気ではない。

 怒らせたらめちゃくちゃ怖いタイプの雰囲気を纏っている。


「あなたはこの男性のことを想っているのでしょう? あなたの潜在意識が具現化した存在が私、ドッペルゲンガーよ? 黙って聞いていてもよかったのではなくて?」


 偽白百合は淡々と話を続ける。


「私の潜在意識……。本当のことかもしれませんね~。でもだったとしても、勝手なことしないでください~。私の狙っている方ですから……」


 白百合は歴戦の狩人のように、鋭い瞳で偽白百合をめ付ける。


「あらあら、あなたそんな目もできるのね。もっと大人しい子なのかと思っていたわ」


 偽白百合はどこか嬉しげに笑みを浮かべる。


「……今までの私の行動でも見ていたような言葉ですね~」


 白百合は淡白に応じる。


「酷獄島に来てからのあなたの様子は知ってるわ。一応、あなたの潜在意識からできたのが私という存在。遡れる記憶はこの島に来てからだけど、十分よ……」


 偽白百合も抑揚なく返答する。


「そうなんですね~。まあ、とりあえず、ここから先は私の意志で進めたいです~。なので……帰ってもらっていいですか?」


 白百合は無垢な笑みを浮かべ、結構残酷なことを言う。


「ご安心なさい。ドッペルゲンガーだと見破られた時点で、私達は消えゆく運命。そろそろ、あなた達の前から消えるわ。ライバルもいるみたいだけど、頑張ってね…………」


 偽白百合は、穏やかな微笑みを浮かべながら消えていく……。


「……ふぅ~。青山先輩大丈夫ですか~?」


 白百合は真剣な表情から、いつものおっとりした表情に変わる。


「俺は大丈夫っすよ。……それより、さっきの話……俺のこと狙ってるって……」


 理人は単純に疑問を尋ねる。


「それは~。ええっと、今聞きます?」


 白百合は頬を桃色に染めて、顔に手を当てている。


「流石に気になるっす」


 理人は真っ直ぐ白百合を見つめる。


 柴助が白百合の横にふわふわと浮きながら話しかけている。


「白百合! 今がチャンスワン! 言っちゃうワン! 何のために守護霊憑依して、わざわざ理人を探したんだワン!」


「柴助……。そうね……。わ、私……青山先輩のこと……」


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