五十一話 それぞれのゴッドとの交信!
「おう! てめぇら! ゴッドと交信はできたか⁉ あと、バスタオルですぐに身体拭いて着替えろ。風邪ひいちまうからな! 男共は向かって右の岩陰。女共は向かって左の岩陰で着替えてこい!」
最上が全員に着替えと、バスタオルを渡してくれる。
全員、着替えて最上のもとへ戻っていく。
「さて、じゃあ聞かせてもらおうか! てめぇらはゴッドの声が聞こえたか? まずは澄華!」
最上が澄華を指さす。
「あ、はい。聞こえました!」
澄華はまだ寒いのか、やや震える声で返答する。
「そうか! 内容を言える範囲で教えてくれ!」
「え⁉ な、内容は……そのぉ……ロマンスゴッドってのと交信できて、悩み相談してました……」
澄華は顔を真っ赤に染め上げる。
先ほどまで寒そうにしていたのが嘘のようだ。
「ほぉ……。そうか! 悩みは解決しそうか?」
「う~ん、すぐには難しいかもです。でも、頑張ろうと思えました!」
澄華は晴れやかな顔つきで答える。
「そうか! ならよかった! 次、市川! てめぇはどうだった?」
最上が市川の方を鋭く見据える。
「はい! 私は生態系ゴッドと交信できました! 地球の生態系は複雑で、お互いが関連し合って、世界が回っていることが知れました! 最高の時間でした!」
市川は普段のクールな印象と違い、情熱的に話す。
「おう! いいじゃねぇか! 深くて広いことを学べたんだな! 次、景伍!」
「拙者は動けるデブゴッドと交信したでござる。動けるデブの何たるかを教えていただいた。これからも、動けるデブでい続けるための努力を惜しまないことを誓います!」
景伍は胸に手を当てて、背筋を伸ばす。
「そうかそうか! てめぇの動けるデブっつう強みを更に伸ばしていけ! 次、理人!」
「俺は……よくわからないゴッドと話せました。近所の失礼なおじいちゃんみたいなのと……。でも、色々と知れたことがありました! 俺自身迷っていた能力の使い方も、今なら自信をもってどう使いたいか答えられそうです!」
理人がぼかして答えたのは、異能の存在を広く知られるデメリットを恐れたからだ。みんなは異能を悪用しようとはしないだろう……。だが、異能の存在を知ったために、何かが変わってしまうことが怖かった。それに万が一ということもある。
そして、異能ゴッドと話せたことで、異能をどう使うかも決心がついた。この能力は困っている人を助けるために使う……!
最初は澄華に言われて、異能スクールアシスターを始めたけど、今はそうじゃない。自分の意思でみんなを助けたいと思っている。
この心の変化は自分でも思っている以上に大きい。
「随分と、いい顔できるようになったじゃねぇか。理人! てめぇはてめぇの思うチカラの使い方をしろ! 次、名巣!」
最上は理人の言葉に満足げに三度うなずいた。
「私はオカルトゴッドの声を聞いたわ……。二日後にオカルティックなことが起こるそうよ……。ふふふふふ。楽しみね……」
名巣は恍惚とした表情で呟く。
「二日後……? あぁ、予定通りならアレのタイミングか……。名巣! てめぇの楽しみにしてる怪奇現象って奴が見れるかもな!」
「はい! 楽しみ過ぎて、もう眠れないと思います!」
名巣は興奮しながら答える。
「おう! 前から思ってたんだが、ちゃんと寝ろよ名巣……。寝ねぇと日中で体力なくなって、怪奇現象どころじゃねぇぞ……?」
最上はやや心配そうに声を出す。
「あ、それもそうか……。はい! 全力で寝る努力をします!」
「全力で寝る努力ってあんま聞かねぇけどな……。まあ、いいや。次、糸!」
「はい! ……私も実はロマンスゴッドと交信できて……。悩みを聞いてもらいました。おかげでやるべきこともわかった気がします……!」
糸は顔を赤らめつつも、強い目をしている。
「糸もロマンスゴッドと交信できたのか……。珍しいこともあるもんだな。だが、やるべきことがわかったのはいいことだ! その調子で頑張れ! 次が最後だ。白百合!」
「あの~。実は私もロマンスゴッドと交信してて……。こんな偶然あるんですかね~。私はロマンスゴッドと恋バナしてました~。色々勉強になってよかったです~」
白百合は頬を桃色に染めつつも嬉しげに話す。
「ロマンスゴッドが三人も……。……こりゃおもしれぇことになってきやがったな! 澄華! 糸! 白百合! てめぇら気張れよ! 後悔のない行動をとるんだぞ……!」
最上は年上の女性らしい優しい笑みを浮かべる。
「はい! 気張ります!」
三人が同時に応える。
「よっしゃ、全員ゴッドと交信できたみたいでよかった! んじゃあ、帰って飯にするか! 今日の精神修行研修は終わりだ!」
最上の一言で全員、最上旅館に戻っていく――。




