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五十話 ゴッドとの交信!

 滝に入って二十秒ほどしてから、冷たさと重み、水の当たる痛みで、だんだんと意識がぼんやりしてくる。

 そして、不思議なことに〝自然と一体〟となっている感覚になってくる。


 ――なんだ……コレ。俺はここにいるけど、俺以外の全てのものと一体となっているような感覚だ……。これが悟りなのか……? 不思議だ。今ならゴッドの声も聞こえてきそうだ――


「ゴッド、聞きたいことがあるっす。この異能の能力ちからは一体なぜ会長に宿ったのですか? そして、俺はこれからこの能力ちからをどうすればよいのですか?」


 だんだんと声が聞こえてくる。


「あれ? 異能ってあの茶髪の可愛い女の子に授けなかったっけ? なんで君みたいな目つき悪い男の子が持ってるんじゃ?」


 第一印象は失礼なおじいちゃんだ。

 え? コレ、ゴッドの声なの? なんか普通にその辺にいるおじいちゃんとしゃべってるみたいなんですけど⁉


「えぇ……。なんか失礼っすよ……。ゴッドってことでいいんですか?」


 理人は尋ねる。おそらく、声には出していない。精神世界で話しているような感覚がある。


「うんうん。ワシ、ゴッドだよ。正確には異能ゴッドだよ~」


 随分軽い調子で自己紹介が行われる。


「異能ゴッド……。そんなのいるんすね……。え? じゃあ、俺以外にも異能使える人いたりするんすか?」


「いるよ~。まあ、数はめちゃ少ないがのう。ワシが気に入った子にしか授けないし」


「それって、どういう基準なんすか?」


「ん~? 顔。…………と正しい心の持ち主かのう」


 異能ゴッドは割と顔と言い切っていた。


「ちょっと、そんなテキトーでいいんすか⁉ 顔がよくても悪い奴もいますよ!」


 理人は半分キレながら言葉を返す。


「冗談……。マジ冗談だってば。そんなに怒んないでよ……。ちゃんと説明すると、第一に異能に耐えられる器があるかどうか。言い換えれば才能じゃの。それがないと誰であっても、異能は授けられぬ。第二に他者を思いやる心。正直この二つをちゃんと満たしていればよい。あとは、世界の異能者のバランスじゃな。あまりに多いと厄災となる場合があるからのぅ」


 異能ゴッドは途中から、急に真面目な口調で話し始める。


「そうだったんすね……。でも、会長は異能をうまく使えてなかった。どういうことっすか?」


 理人はずっと疑問だったことを尋ねる。


「ちょっと待っておくれ。なんで君が異能譲渡されてるのか、確認させてほしい。…………あ~なるほどね。ふんふん、ほーん」


 異能ゴッドはちょっとバカにしたような声を出す。気のせいかもしれないが……。


「何かわかったっすか?」


「あ~。彼女ね。異能才能Sなのよ。だから、ちょっとしたことをしようとしても、とんでもない威力が出ちゃったんじゃの。まあ、どちらかというと、わざとしてるようにも見えるがのぉ……」


 異能ゴッドは物憂げな声を出す。


「才能S⁉ じゃあ、会長が異能持ってた方がいいんじゃ……。でも、わざとしてるようにも見えるって……?」


「異能は持つ者に様々な能力ちからをもたらすが、才能が高過ぎればその分、見える世界が変わる。人の心や善悪、聞きたくない言葉などまで、常にわかってしまうと辛いじゃろう……」


 異能ゴッドは自らの罪の意識を感じさせるような言い方をする。


「会長は異能を授かってすぐで、能力ちからをコントロールできてなかったってことっすか?」


「その可能性は十分にある。結果、お主に異能を託したのじゃろう。正しき心を持ち、才能がギリギリEだったお主にのぉ」


「なんか後半、嫌味入ってないすか……? でも、なんとなく、会長が俺に異能を譲渡した理由がわかった気がするっす。……あと、そこで俺を選んでくれたのもちょっと嬉しいかも……」


 理人は澄華に少なくとも頼りにされたという実感が湧き、嬉しくなる。


「まあ、そんなところかのぉ。お主は心根こころねが優しい。お主になら、異能を預けたままでもよかろう。お主の思うように、異能は使うといい」


 その言葉を聞くと、ふっと意識が現実に戻っていく感覚がある――。


「理人氏、そろそろ四十秒経つ。出てきていいって最上先輩も言ってるでござるよ」


 景伍が唇を青紫にしながら、教えてくれる。


「それだけの時間しか経ってなかったんすね……。いや、冷たっ……! 早く出よう!」


 理人は意識が完全に現実に戻り、いそいそと滝から脱出した。


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