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四十八話 ハリセン組手 結末

 時刻は昼前。


「よし! 今日はここまでだ! なかなか気合入ってんじゃねぇか! てめぇら!」


 最上は満足げに高笑いを上げる。


「はぁはぁ……。でも、結局一本しか取れてないままっす……。しかも毎回、最上先輩頭を叩くから、頭痛いし……」


 理人は息を切らしながら、なんとか言葉にする。


「いや、ハリセン組手初日から一本取れた時点で優秀だぜ? 頭だけ狙ってるのはハンデだ。最悪、頭さえ避ければいいからな……」


「頭狙ってるのハンデだったんすか⁉ 嫌がらせかと思ってました……」


 理人は思ったことがそのまま言葉に出る。


「……理人ォ。てめぇ俺のことなんだと思ってんだ……?」


 最上が睨みを利かせる。


「え、え~と。厳しいけど、お優しいお姉さま……です……」


 理人は動いてかいた汗とは別に、冷や汗をダラダラとかく。


「そうかそうか。よくわかってんじゃねぇか。俺はお優しいお姉さまだよ。あ~、ちなみにこの修行、三本取れるまで続くからな。覚悟しとけよ~!」


 最上は当たり前のように言葉を飛ばす。


「わゎ……! そんなの耐えられないよ……。もう動けない……」


 糸が力無く倒れ込む。


「私ももう動けません~」


 白百合はふらふらと座り込む。


 ちなみに、名巣は途中から体力の限界がきて、地面に突っ伏したまま十分ほど動いていない。

 声をかけると返事があるので、死んではいない。


「おいおい、情けねぇな……。まあ、明日は別の精神修行を考えてるけどな。今日は戻ってゆっくり休め。……おい、起きろ名巣!」


 最上が名巣の頭をハリセンで軽く叩く。


「あちきは、地面……。地面と同化してるわ…………」


 名巣が死にそうな顔で、地面と同化しようとしている。


「名巣てめぇ……頭叩き過ぎておかしくなっちまったのか……。すまんなやり過ぎたか……」


 最上が憐れむように小さく呟く。


「あ、あの。名巣部長は割といつもこんな感じです」


 糸が言葉を挟む。


「……いつもこんな感じなのか……。まあ、世の中色んな奴がいるわな……。ほれ、俺が背負ってやるから、起きろ……!」


 最上が別種の生き物を見るような瞳をした後、名巣を背負い歩きだす。


 全員クタクタの身体を何とか動かし、最上旅館へと帰っていった――。


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