四十四話 精神修行研修 二日目! 海で宝玉探し!
翌日。
「おう! てめぇら! 揃ってるな! 精神修行研修二日目だ! 今日は海にぶん投げた宝玉を探しに行ってもらう! 海っつっても、膝くらいの浅瀬が続いている。ただし、五十メートル以上奥には行くな! そこから急に底が深くなってるからな!」
最上が朝から大音量の指示を出す。
「はい!」
理人達は全員で一斉に返事をする。
「こん中で泳げない奴はいるか?」
最上が尋ねる。
「あ、私泳げないです……」
糸がおずおずと手を挙げる。
「そうか! じゃあ、糸は理人と市川と一緒に動け! 理人! 市川! 危なくねぇように、一緒にいるんだぞ!」
「はい!」
理人と市川はすかさず答える。
「んじゃあ、全員水着に着替えろ! 持ってくるように言っておいたよな?」
「はい! 全員に周知してます!」
澄華が声を張る。
「よし! じゃあ、宝玉探しスタートだ! 十三時には飯食うから、戻って来いよ!」
最上の号令で全員水着に着替えて、海辺まで出る。
「じゃあ、今回どうやって探すか相談するわよ」
澄華がリーダーシップをとる。
水着は桃色のビキニを着用している。自身でも自覚しているのか、豊満なバストとヒップが強調されているように感じる。
正直、かなり胸とおしりに目がいってしまう……。
「そうだね。澄華お姉ちゃん!」
糸がすぐに反応する。
水着は白のワンピースタイプを着ている。糸は小柄だが、背丈に対して胸が大きいため、アンバランス感がなんとも色っぽい。
子どもっぽい顔つきと相まって、不思議な艶めかしさを感じる。
「昨日みたいに三つに班を分けますか~?」
白百合が少し眠そうに尋ねる。
上はタンクトップ風の青と白のボーダー柄の水着で、下は青のフリルスカートタイプだ。バストもヒップも控えめであり、スレンダーで整然美を感じる。
黄緑のロングツインテールの髪と、水着が織り成すコントラストが目を惹く。
「そうだね。班を三つに分けよう。糸ちゃんは理人君と私と一緒に動くから、他の人で二人ずつペアを作ろうか」
市川が涼やかな声で提案する。
水着は黒のビキニの上に、シースルートップスを羽織っている。背丈があり、程よく鍛えられた身体のため、スタイルが非常に良い。
黒髪ベリーショートカットで顔つきも中性的でイケメンなため、美しい男性と間違えられてもおかしくはないだろう。
話し合った結果、澄華、白百合ペア。景伍、名巣ペアで探すこととなった。
「それじゃ、宝玉探しますか~」
理人が声を上げる。
「そうだね。写真を見た感じ、緑色の手の平サイズのものみたいだ。海の中となると、どうやって見つけようか……」
市川が悩ましい表情で呟く。
「『お師匠』! 宝玉は浅瀬にある石と比べると、大きいと思います。つまり、波で砂浜側に押し戻されづらいんじゃないかと。なので、奥の方から探すといいと思います。最上先輩が手前の方に宝玉を投げ込んだとも考えづらいので!」
糸が手を挙げながら、キラキラした瞳で提案する。
「え? いつの間に副会長と糸ちゃんに師弟関係が……?」
理人は当たり前に出てくる疑問を口にする。
「ああ。昨日に料理をしていた時に頼み込まれたんだ。ちなみに、会長も弟子になったよ……。少しばかり、プレッシャーがあるよ……」
市川は遠い目をしている……。
「副会長のお料理スキルは素晴らしいです! お師匠と呼ばせてもらうにふさわし過ぎます! それに……料理がうまくなってから、ご飯を食べてほしい人もいるし……」
そう言い、糸は理人の方を見つめてくる。
「糸ちゃんにそんな人が……! いやぁ、理人お兄ちゃんとしては嬉しい話だなぁ」
理人は素直に自分の思っていることを伝える。
「…………理人お兄ちゃんのバカ……」
糸は頬を膨らませながら呟く。
「んぇ……? 俺はお兄ちゃんとして嬉しくて言ったんだけど……」
理人は汗をかきながら、糸が怒っている理由をあれこれ考える。
「…………糸ちゃん、難儀な人に想いを寄せたのかもね……」
市川が呆れたような声を出す。
「お師匠もそう思いますよね…………」
糸も呆れたように首を二度振る。
「え? え? 俺だけわかってない⁉ どういうことっすか⁉」
理人は一人取り残された状況から、更に焦って声を出す。
「……それを聞くのは、失礼というものだよ。理人君……」
「そうだよ、理人お兄ちゃん!」
「うわわ……。ちょっと考えさせて…………」
理人は本気で焦り始める。
「もういいよ。行きましょうお師匠! 早く宝玉見つけてみんなで水遊びしたいし!」
糸がむくれたまま市川を押していく。
「やれやれ……。弟子の応援も頑張るとするか…………」
市川は苦笑する。
「ちょ、置いてかないで~!」
理人は走って二人を追いかける――。




