四十話 宝剣は エクスカリバー⁉
「糸氏のおかげでござる。高い所から、宝剣の輝きを探したんでござる。理人氏はどうやって見つけたんですかな?」
景伍が軽く首を傾げながら尋ねる。
「ええっとそれは……。似たような感じっす。宝剣ピカピカしてたから……」
理人は白百合が守護霊憑依できることを、軽々しく言うべきではないと判断し、似たような理由で見つけたことにする。
「おお~! 糸氏と同じような理由でござるな! 頭が回る人がいると助かりますな!」
景伍は嬉しそうに笑っている。
「じゃあ、早速宝剣持って帰ろっか」
糸が宝剣を指差しながら提案する。
「そうですね~。私抜きますね~」
白百合が宝剣を引き抜こうとする。しかし、抜けない……。
「あれ~。深く刺さり過ぎてるのかビクともしません~」
白百合が汗をかきながら、全員に伝える。
「むむ……? そうなのでござるな。よく見れば、伝説に出てくるエクスカリバーのような見た目ですな。まさか……選ばれし者でないと引き抜けぬとか……」
景伍が目を輝かせながら呟く。
「そんなことあるんすか⁉」
「だったら、この超絶美少女に任せなさい……」
澄華が宝剣を引き抜こうとする。しかし、宝剣はビクともしない。
「何よこの剣。最上先輩が強く刺し過ぎてるんじゃない⁉」
澄華が毒づきながら、後ろに下がる。
「では、拙者が……」
景伍は宝剣の前で二度深呼吸をする。
「さあ、我を選びたまえ! エクスカリバーよ!」
景伍の全力と思われる、引き抜きが行われる。
「ふん……ぬおぉおぉぉぉおおおおおお!」
景伍の咆哮が響き渡る。
ベギッッ! という音が咆哮を止める。
宝剣は引き抜けたが、鍔部分から後ろが見事にへし折れている……。
「あ……。これは……元々こういう形でござったか? 二刀流的な……?」
景伍が青白い顔をして哀愁漂う声を出す。
「ちょっと景伍! あなたこれ……。最上先輩に皆殺しにされるんじゃない……⁉」
澄華がらしくない焦り方をして、声を荒げる。
「な、なんと……。これは拙者の落ち度……。腹を切ってお詫び致す」
景伍は覚悟がガン決まった顔をしている。
「えぇ……。私こんなとこで死にたくないよぉ……。理人お兄ちゃん……」
糸が涙目で理人の方を見つめてくる。
「ま、待つっす。景伍は切腹しなくていいし、糸ちゃんも泣かないで……。もしかしたら、俺がなんとかできるかも……」
理人は大急ぎで異能トリセツを確認する。
「理人氏……。真でござるか……?」
景伍は藁にも縋る顔で見つめてくる。
「ちょっと待ってほしいっす。何かないのか……。あ、コレなら……」
トリセツには〝物質修復〟という項目があった。才能Eでも多少であれば、元の状態に修復できるようだ。
「集中したいから、ちょっと離れたところに行ってもいいっすか?」
「もちろんでござる。……理人氏、みなの命が懸かった大事を任せてしまい、申し訳ない……」
景伍は深々と頭を下げる。
理人は思う。そう言われると、余計プレッシャーが凄まじいんですけど⁉
少し離れた場所にて。
理人は全力で集中していた。
「物質修復は自分の身体を治すことの延長線上にある能力。身体を治すイメージを、物質にまで拡張する……。何コレ……。難し過ぎないっすか⁉」
理人はブツブツと呟きながら、宝剣を修復し続ける。
「ぬぅぅぅ。直れぇ。直れぇ……。ダメか……。才能Eじゃ難しいのかな……? 身体を治すイメージを物質にまで拡張か……。コレって何かを引き換えに直せたりするのかな……?」
理人は思いついたことをやってみることにする。
「うぉおおおお。直りやがれぇぇ。俺の右肩を犠牲にしてもいい……! どうだ……⁉」
モキョッという不快な音が身体に響く……。
「痛ぇぇ……。あ、でも、宝剣直った。やった!」
勢いよく立ち上がった理人は右肩が外れており、激痛が走る。
「痛い痛い痛い……。異能って便利だけど、結構体張らないとダメだよねぇ……」
カバンから栄養補助ゼリーを取り出し、一気に飲み干す。
「ふぅ……。これで、右肩を回復させれば大丈夫……。右肩よ……マジで頼むからあんまり痛くなく治れ……!」
モキュッという音と共に、右肩が治る。やはり結構痛い……。