四話 イケイケ系男子
イケイケ君こと、池内颯多のもとへ到着し、空き教室で話を聞く。
「時間もらっちゃってごめんっす。生徒会書記の青山理人です」
「私は生徒会副会長の市川加奈だ。話聞かせてもらえる?」
「もちろんです! 副会長、市川先輩! やっぱり実物を間近で見ると、かっこいいですね!」
池内は興奮気味に話し出す。
というか、俺のこと眼中になさすぎじゃね……?
「そりゃどうも。で、いつから体調が崩れてる?」
市川はあまり取り合うことなく、話を進める。
「やっぱクールで、かっけぇ……。あ、体調崩れたのはちょうど三週間前くらいですかね。最初の頃は本当にきつかったんですけど、最近落ち着いてきて学校にも来れるようになりました」
たしかに池内の顔色はひどいという訳ではない。
「三週間前か……。何か変わったこととかあったっすか?」
「高校に通い出して二週間くらいで、慣れてきたってことはあります。他は何かあるかな……? 友達と遊びに行ったりとか?」
池内は頭を捻る。
「なるほど……。その友達や関係者で何か変わったことはある?」
市川が淡々と質問する。
「友達のうち二人が今もまだ学校休んでます……」
池内は暗い顔をする。
「友達が二人も……。それは心配っすね」
「そうですね。心配です。早く学校に来れるようになればいいんですけど……」
「その友達も、俗にいうイケイケなの?」
市川は真顔で問いかける。
「え……? いやぁ、イケイケというか……。たしかに、俺がつるんでるグループはイケイケフォーって呼ばれてます。なぜなら、イケイケだからです」
池内も真面目なトーンで返す。
「……二人もイケイケ……。こんなこと聞くのは生徒会権限でも何でもないっす。もしよければ聞きたいんすけど、女の子と遊んだりとかもしてる?」
「……普通に遊びに行ったりはしてます……」
ここで池内は視線をやや逸らす。
「……その二人と女性関係で何かあった?」
市川は淡々と問いを投げる。
「いや、そんなことは……。……あ、でも。もしかして……?」
池内は何かを思い出したような表情をする。
「差し支えなければ、何かあったんすか……?」
「……いや、やっぱ恥ずい……」
池内は市川の方を気にしている様子だ。
「副会長、今すげぇ喉渇いてて、ルイボスティー買ってきてくれないっすか? 一本ジュースおごるんで!」
理人は市川に手を合わせる。
「……分かった。ここからだと自販機が遠いから、十分は戻れないと思う」
そう言い、市川は教室から出ていく。
「そいじゃ、改めて何か思い当たることが……?」
理人はできるだけ、親身に聞こえるように明るく声をかける。
「そのぉ……実は、うちの学年にすっげぇ可愛い子がいまして……」
「ほうほう。で、もしかして、取り合いになっちゃったとか?」
「あ、いや。争ったりはしてないんです。俺達仲もいいので……。ただ、誰かに取られちゃうかもっていう焦りもあって、俺達のグループ三人がそれぞれ告白したんです」
「マジっすか! 入学二週間で……。流石イケイケ……。あ、いや、話を続けてください」
「それで……。その、全員玉砕でして……」
「ありゃ……。それは申し訳ないことを聞いたっす……。その振られちゃった時から、体調が悪いってことっすよね?」
「ですね。全員別日に告白したんですけど、調子が悪くなりだしたのも全員振られた当日からでした」
「なるほどっす……。ちなみになんすけど、他にも一年生で調子悪い男子生徒いるじゃないっすか? その人達とは何か関係あったりする?」
「直接関係はないんですけど、どうも同じ子に告白した人っぽい……です」
池内は言いにくそうに話す。
「あぁ~。そっかぁ。これ聞いていいのかな……。いやでもなぁ……」
理人は十秒程考え込む。そして口にする。
「その告白した子の名前聞いてもいいっすか?」
池内も悩んでいるのが分かる。そりゃそうだ。自分が告白して振られた人の名前。かつ、幽霊騒ぎなどと言われている張本人の可能性があるのだから。
「…………。瀬奈白百合さんです……」