三十九話 宝剣捜索!
その後、理人は澄華に電話で呼び戻される。
「理人、あなたの容疑は晴れたわ。逮捕して悪かったわね……」
澄華はばつが悪そうに言葉を発する。ただ、どことなく、怒っているようにも見える。
「あの~会長? 俺の容疑って晴れたんすよね……?」
理人は澄華の様子が気になり、尋ねる。
「晴れたわ。その代わり別の容疑が浮上したけどね……」
「え? 何が浮上したんすか~?」
理人は更に詰問が続くのではと、ビクビクしながら問いかける。
「……理人に対してじゃないから、気にしないでちょうだい。はぁ……まさかね……」
澄華は遠くを見つめ、嘆息をもらす。
「え? え? 何ですか? 気になるっす」
「気にしないでいいって言ってるでしょ! 全くこれだから、理人は……」
澄華はなぜか呆れ果てている。
「ちょっと、露骨に呆れてないですか? 気にしなくていいの? 本当にいいんすか?」
「…………まあ、もう少し周りの女子のことは考えた方がいいかもね……」
澄華は頬をうっすら赤く染めながら呟く。
「周りの女子……。……誤解を与えないように善処するっす!」
理人は良い笑顔で答える。
「白百合さん、理人の鈍感さどう思う……?」
不意に澄華は白百合に話を振る。
「いや~。ここまでくると才能ですね~。青山先輩はこんな人だって理解するしかないですね~」
白百合は呆れを通り越して、清々しい顔をしているように感じる。
「そうね……。まあ、いいわ。今は宝剣を探すのが先だからね」
澄華が本題に話を戻す。
「とりあえず、守護霊憑依しますね~。柴助いくよ~。守護霊憑依~!」
白百合の中に柴助が入っていく……。
「全く鈍感なオスだワン! 柴だったら、蹴り倒してるところワン!」
柴助が早速怒りをあらわにしながら、話し始める。
「えぇ……。みんなして、俺のこと鈍感、鈍感って……。一応、女の子に迷惑かけたりしないように気を付けてはいるんすけどね…………」
理人は心底困ったような顔をする。
「…………こりゃ、ダメだワン。澄華、宝剣を探しに行くワン! くんくん……」
「そうね。行きましょう」
澄華が短く答え、理人を置いてスタスタと歩いていく。
「ちょ……ちょっと待ってくださいよ~」
理人が急いで追いかける。
◇◇◇
二時間ほど山の中を探し回った結果、宝剣のありかがわかった。
「結構時間かかっちゃったワン」
柴助が少し申し訳なさそうに声にする。
「いえ、そんなことないわ。何の手掛かりもなしに探してたら、二時間で見つけることなんて不可能だったわ」
すぐに澄華が優しい声でフォローを入れる。
「そうっすよ。柴助さん。柴助さんのおかげで、見つけれたんすから。ありがとうございます」
理人は素直に思ったことを言葉にする。
「ふふん。ならよかったワン」
柴助は嬉しげに鼻を鳴らす。
そこに、声が聞こえてくる。
「あれ? 理人お兄ちゃん達! 宝剣見つけたんだね!」
糸と景伍が走って近づいて来る。
「糸ちゃん、景伍! ほぼ同時に見つけたっすね!」
理人は顔が綻ぶ。なんだか、澄華と白百合からの視線が痛いからだ。