三十八話 おっとり系女子 高飛車系女子――バチバチ
理人は澄華に逮捕されて詰問にあっていた。
「いい加減吐きなさい! 吐くと楽になれるわよ!」
澄華が裏山から少し離れたベンチで理人を正座させて大声を上げる。
「あの……だから、違うっすよ。会長、俺がそんなことする奴だと思います……?」
理人は涙目で澄華に問いかける。
「……可愛い後輩が相手だとわからないわね……」
澄華は一瞬迷いつつも、詰問を続ける姿勢だ。
「だぁ~もう! 柴助さん、一旦、守護霊憑依解除してもらえないっすか? 白百合さんから、話してもらいたいです!」
「全く面倒なオスとメスだワン……。柴は本当のことを言ったまでワン。仕方なしに解除するワン」
柴助は面倒くさそうに呟き、白百合の身体から抜け出ていく。
「…………戻りました~。青山先輩お困りみたいですね~」
白百合が間延びした声で話し始める。
「うちの青山書記があなたにご迷惑をかけている可能性があって、色々話を聞いていたの。……理人、あなたちょっとの間、席を外してくれる? 後で、電話で呼ぶわ。ただし、逃げようなんて思わないことよ……!」
澄華が鋭い声を理人に向けて放つ。
「もう……どんだけ信用ないんすか……。はいはい。逃げたりしないっすよ……」
理人は裏山の方に歩いていく。
◇◇◇
「さてじゃあ、お話の続きをしましょう。青山書記はいないから、正直に話してちょうだいね……。今のあなたはさっきまでとは全く雰囲気が違うわ。本当に守護霊憑依をしていたの……?」
澄華が白百合の目を真っ直ぐ見て尋ねる。
「そうですよ~。私は家族だった柴犬の柴助が守護霊なんです~。柴助に力を借りる時は憑依してもらうので、性格そのものが柴助になっちゃうんです~。行動も変わるので、四足歩行になります」
白百合はごくごく真面目な口調で話を進める。
「…………嘘はついてなさそうね……。嫌々理人に従わされてたりはしない……?」
澄華は慈愛を含む声で確認する。
「そんなことはないです~。むしろ、進んでしてるといいますか……。なでなでもしてもらえますし~」
白百合は真面目な口調だが、少しばかり照れつつ話す。
「ん……? なでなでしてもらえる……? 詳しく聞かせていただきましょうか……? 理人があなたを名前呼びなのも前から気になってたのよね……」
澄華の目に一筋の鋭い光が奔る。
「詳しくも何もないですよ~? 私は思ったことをお伝えしただけです~。気になる男の子とスキンシップできたら、嬉しいと思うのが女の子じゃないですか?」
白百合はいつものふわふわした雰囲気ではなく、少し強気なように見える。
「それは……。そういう意味って受け取っていいのね……?」
澄華は何かを察したような表情をして、白百合を見つめる。
「どう受け取るかは、会長さんにお任せします~」
白百合はいつものふわふわした雰囲気に戻っている。
「そう……。わかったわ。少なくとも理人の濡れ衣は晴れた訳ね……。これからよろしくね。白百合さん……?」
「はい! 会長さん~!」
二人の間で何かがバチバチと弾けているような雰囲気だ。




