三十四話 いざ! 精神修行研修!
夏休みとなる。
生徒会室にて、生徒会役員の全員が集まっていた。
非常に厳かな雰囲気だ……。
澄華が、手を前で組みながら声を出す。
「今年もこの時期がきたわ……」
全員が固唾を呑んで言葉の続きを待つ……。
「……生徒会年一回の大行事、『山と海のある自然で精神修行研修』よ……!」
澄華の声が静かな生徒会室に響き渡る。
「ついに、この時期がきたか……」
市川がまず声を出す。
「過酷な修行となるでござろうな……」
続いて、景伍が神妙な顔つきで言葉を紡ぐ。
「……去年のことを思うと、怖いっすね……」
理人は去年の修行を思い出し、声を震わせる……。
「非常に厳しい修行となると思うわ。みんな覚悟してちょうだい! そして、今年は『精神修行』という文言に釣られて、苦行仲間が増えたわ……。オカルト研究部よ!」
澄華はやや苦々しい顔をしながら声にする。
「え! オカルト研究部も参加するんすか⁉」
理人が反射的に反応する。
「ええ。何度も厳しさを伝えたのだけれど、何でも『魂を一次元上昇させる』ために精神修行がしたいそうよ……。糸に話した私がバカだったわ……」
澄華は額に手を当てている。本気で後悔しているのだろう。
「会長、やはり今年も一週間の日程ですか?」
市川が尋ねる。
「そうよ。みんな! 何とか一週間乗り切るわよ! さあ、円陣を組むわ!」
澄華の声掛けで、全員で円陣を組む。
「誰一人欠けることなく、戻ってくること! いいわね!」
「はい!」
生徒会室に全員の声が響く。
◇◇◇
生徒会、オカルト研究部のメンバーは貸し切りバスに乗っていた。
「こんな修行のための研修なんて初めてだよ! 楽しみ~!」
糸が腕をブンブン振りながら、興奮気味に声を出す。
「そうだよね~。私もこんなの初めて。楽しみだね~」
白百合が間延びした声で共感する。だが、いつもよりテンションが高いのか、声量が大きめだ。
「ふふふ。楽しみ過ぎて一睡もできなかったわ……。色々なオカルトセットも持ってきたから、後でオカルト実践もしましょうね……」
血走った目で名巣が不気味な笑みを浮かべる。
「みんな、楽しそうっすね……。会長からも聞いてると思うけど、かなりキツイっすよ? 覚悟だけはしといてくださいね。指導してくれるのが、なんせ『歴代最強の生徒会長』最上魔尾さんなので…………」
理人は冷や汗をかきながら伝える。
「歴代最強の生徒会長、最上魔尾さん……?」
糸が疑問符を浮かべる。
「そうっす。文武両道、才色兼備、質実剛健、鬼人最上……色んな呼ばれ方されてるけど、なんせ指導が厳し過ぎて……。毎年、生徒会は最上先輩の所へ修行に行くんだけど、毎年誰か死にかけるんすよねぇ……」
理人は青い顔をしながら、窓の外を見る。
「そ、そんなに厳しいの……? こ、怖くなってきた……」
糸もつられて青い顔をする。
一方、名巣は嬉しげに話す。
「いいわね……。その方が、魂を一次元上昇させることができそうだもの……。楽しみ過ぎるわ……」
目のクマが酷い名巣が笑う。顔色の悪さも相まって、凶悪なピエロのように見える……。
「名巣さんは置いておいて……ごめんね、行く前から驚かしちゃって……。……そういえば、他のオカルト研究部の人達は来れなかったの?」
理人は思わず、違う話題に切り替える。
「そうなんです~。みんなこの修行の日に予定が入っちゃってたみたいで……。なので、オカルト研究部からは私達三人が参加させてもらいます~」
白百合が笑顔を交えながら説明してくれる。
「そうだったんだ。まあ、仕方ないね……」
理人は〝それは幸運だったね〟と言いそうになるのを抑える。
◇◇◇
バスが目的地の酷獄島に到着する。
左手には光を反射して白く輝いている砂浜。そして、砂浜に吸い寄せられるように動く海の美しい青。右手には木々が生い茂り、浄化されるような気分になる山の緑が広がっている。
パッと見た印象はリゾート地といっても過言ではないだろう。
ここで行われることを除けば……。
「さてじゃあ、最上先輩に会いに行こっか」
澄華が穏やかに話し出す。ただし、どことなく緊張を隠しているようにも感じる。