三話 イケメン系女子
翌日。登校後、理人はクラスの自席にいた。
昨日に澄華と話した通り、理人は今日から異能スクールアシスターだ。だけど、困ってる人ってどうやって見つける……? そこまで細かい話は澄華としてなかったな……。
そんなことを考えてると、理人を呼ぶ声が聞こえてくる。
「今日も早いね。理人君。何か悩み事?」
学校指定のセーラー服をきっちりと着た女子生徒、生徒会副会長の市川加奈がいた。身長が一八〇センチメートルと女子の平均と比べると高い。黒髪のショートカット。目つきがやや鋭いが、雰囲気は柔らかい。男子の理人から見てもかっこよく感じる。何でも、女子のファンクラブがあるとかないとか……。
「おはよっす、副会長。……朝から変なこと聞くかもっすけど、困ってる人とかっているかな?」
「ん? 困ってる人? う~ん、何かな……? 身長が高くて、バスのつり革で頭打ったりとか……?」
「それ、副会長の悩み事じゃないっすか……?」
「一々高さを気にするのが面倒……。まあ、それは冗談として、最近学校内で噂になってる幽霊騒ぎなんかは困り事かもしれない」
「幽霊騒ぎ?」
「そう。何でも一年生を中心に幽霊に憑りつかれたという人が増えているみたい」
「幽霊に憑りつかれたぁ……? 何か怖い話っすね……。何か特徴とかあるっすか?」
「う~ん、そこまでは分からない。……もしかして、理人君が解決しようとしてる?」
「そうっすね。副会長は知らないかもだけど、俺昨日から生徒会書記兼、スクールアシスターになったんす。会長命令で……」
「あ、それなら昨日に会長から聞いてる。理人君が人助けに燃えてるから、生徒会も全力バックアップをするようにって」
「会長もう、言ってんすか……。まあ、行動が早いのはいいことだけど。ってことで、協力してくれないっすか? 副会長?」
「構わないよ」
◇◇◇
放課後。
「とりあえず、一年生に聞き込みに行くっすかね」
理人は市川を見る。
「そうだね。幽霊に憑りつかれた人は男子生徒ばかりみたい。聞き込みも男子生徒に絞った方がいいだろう」
「分かったっす。じゃあ、行くっすか~」
◇◇◇
一年生の棟にて。
「聞き込みしたっすけど、結構イケイケタイプが被害に遭ってるみたいっすね。あと、被害としては、不眠、悪夢があげられる。悪夢で特に気になったのが『柴犬の幽霊』に追いかけ回される、最悪の場合噛みつかれて痛みすら感じるってとこ。まあ、本人達がメッセージで友人に言ってたことみたいなんで、どこまで信用していいのか分からないけど……」
理人は顎に手を添える。
「そうだね。思ったより、局所的な被害のようだし。現状把握できてる限り、一年生で六人。全員男子生徒……」
市川は頭を捻る。
「ついさっき、会長から連絡あって、生徒会への相談で三年生でも男子が一人被害に遭ってるって聞いたっす。何かあるのかな……? ちなみに、イケイケタイプらしい」
「……共通項は全員がイケイケタイプということか……。目先の欲求に忠実なタイプ……」
市川は冷淡に言葉を紡ぐ。
「……副会長、あんまりイケイケタイプ……というか、軽い男好きじゃなさそうっすもんね……」
理人は頭をかきながら話す。
「なぜあんな軽いのか理解できない。あ、頭も軽いのか……!」
市川は手を叩く。
「副会長? それ、ボケですか? ディスってるんすか?」
「半分半分」
「そっすか。……俺も一応気を付けよ……。あ、でも、事態は深刻っすよ。体調崩して学校に来れてない人が多い。一年生でも今日来れてるのが一人みたいだし。本人に直接聞くっすかね」
「そうしようか。被害の心当たりがあれば解決できるかもしれない」
「……念のためっすけど、イケイケ君だったとしても、キツく当たっちゃダメっすよ?」
「……善処する」
「……ヤバい奴じゃん……」
理人はまだ見ぬ、イケイケ君を案ずるのであった……。