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二十九話 怖いクールビューティ系女子

 放課後。

 生徒会室に来訪がある。来たのは糸だ。


「理人お兄ちゃん。毎度ごめんね! 実は相談したいことがありまして……」


 糸が遠慮という文字を顔に貼り付けたような表情をする。


「どうしたの、糸ちゃん? 俺はスクールアシスターだから、気にしないでいいっすよ!」


 理人は笑顔で手招きする。


「ありがとう……。今回相談したいことは、同学年の女子バスケ部の友達なの。いや、正確にはバスケ部の部長って言った方がいいか……」


 糸がどう伝えたものかと思案しているのが、見て取れる。


「何やら、ややこしい状況? 聞かせてほしいっす」


「困り事を相談してきたのは、バスケ部の友達なんだ。内容はバスケ部の練習があまりにも厳し過ぎて辞めようかと迷ってるって話。バスケが好きな子だから、それは避けてあげたいんだ……。他の子は辞めちゃった子も結構いるみたいだし……」


 糸は友人を想い、複雑な表情を浮かべる。


「バスケ部の練習が厳しくて、辞める人まで出てるのか……。それは、しんどいね……。うちのバスケ部、超強いっすもんね。う~ん、どうしたもんか……」


 理人は文字通り頭を抱える。


「あ、待って。話には続きがあるの。元々、部長をしていた人が病気で引退することになって、三年生の神代結芽かみしろゆめ先輩が新しく部長になったんだ。神代先輩は元々、すごくバスケが上手な選手なんだけど、その分自分にも他人にも厳しい人で、練習も一気に厳しくなったみたい」


「なるほど……。そういう事情があったんすね……。顧問の先生はどうしてるんすか?」


「神代先輩がエースで、練習方法も間違ってはいないから、強く言えないみたい……」


「そっか……。わかった。正直、どこまで力になれるかわからないけど、できる限りのことをするよ」


「理人お兄ちゃん……! すごい、何か後光が差してるように見えるよ……。ありがたやぁ」


 糸は大層ありがたそうに、手を合わせる。


「ちょっと、糸ちゃん、大袈裟っすよ。……じゃあ早速、神代先輩に会いに行こうか。ちょうど部活してる時間だろうし」――。


 ◇◇◇


 バスケ部のコートに到着する。


 そこに神代はいた。外見は一言で表すとクールで気品ある美人だ。ただし、つり目で気の強そうな雰囲気があり、軽い気持ちで声などかけると、噛みつかれそうな危険性も孕んでいる。身長は一八五センチメートルほどだろう。


 そして、神代による、非常に厳しい練習の光景が目に映る。


「ねえ! なんで今、そこにポジショニングしたの⁉ ボールの位置と選手の位置を考えたらわかることでしょう! 得点のチャンスをあんたは潰したのよ? チームに迷惑をかけたの。わかってるの?」


 神代の火山が噴火したかのような、怒涛の詰めが行われる。


「す、すみません。神代部長……。でも、私あのタイミングでコートの状況を把握するのは……」


「でもじゃない。できないなら、できるようにすればいいのよ。そのための練習でしょ! 似たような状況にも対応できるように、考えなさい! あまりにも出来が悪いとレギュラー外すよ⁉ 勝てる選手しか生き残れないんだから! 他のみんなも似たようなミスは絶対しないで!」


 神代は相手の部員が半泣きになっているのなんて、お構いなしに言葉を鈍器のように振るう。




「糸ちゃん……。これはなかなか、スパルタ……いやもう、パワハラレベルかもっすね……」


 理人は腹の底から湧いてくる怒りに似た感情を、言葉に滲ませる。


「うん……。みんな怯えながら部活してる……。こんなのおかしいよ……」


 糸は泣きそうな声で、弱々しく言葉にする。


「……もう、見てらんないっす。ちょっと行ってくる……」


 理人は神代の方に歩いていく。


「え? ちょっと理人お兄ちゃん! どうする気なの⁉」


 糸の焦った声を背負いながら、理人は進み続ける。


たのもー! 神代部長、少しお話よろしいっすか?」


 理人は凛とした表情で話しかける。ただし、心中は怒りの感情が七割ほどを占める。


「誰、あんた? 練習の邪魔しないでくれる?」


 神代は明らかに苛立った様子で応答する。

 練習で体温が上がっているのか、身体から蒸気がでており、威嚇するようなオーラにも見える。


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