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二十七話 ハイパークッキング ~実食編~

 理人はまず、オカルト研究部のオムライスの前にいた。


「理人お兄ちゃん。私、まごころ込めて作ったから、食べてほしい!」


 糸は純真な瞳を向けてくる。


「うん……。料理に大事なのはまごころとか愛情っていうもんね! きっと美味しいよ。うん……そう願ってるね」


 理人は息を整える。

「……で、ではいただきます」


 理人のスプーンを持つ手が震えている。

 これ、食べても死なないよな……。


 理人は一口分のナニカを口に運ぶ。


「こ、これは……。……い、意外とイケる! とてつもなくスパイシーだけど、様々な調味料、香辛料の織り成すハーモニーが、指揮者無しのオーケストラを聞いているようだ……!」


 理人は味のインパクトが凄すぎて、よくわからないコメントをする。

 なんか、アタマ回らない……。


 観客から、拍手が起こる。


 まだ、終わってない……!

 正直、次はヤバいのが来そうだ……。


 理人はゆっくりと、生徒会のオムライスの前に移動する。


 既に匂いが凄い。目の前で野焼きでもしているのではないかという、炭の強烈な匂いがする……。


「理人……。私、料理得意だと思ってたから……。まさか、ここまでの代物になるとは……」


 流石の澄華も遠慮がちな声だ……。


「会長……。なんで、料理作る前あんなに自信満々だったんすか……?」


「だって、私は何でもできる超絶美少女よ? 料理くらい、したことなくても大丈夫って思うじゃない……」


 澄華はモジモジと指先を触っている。


「いや、どんだけ自信家なんすか⁉ もう……。とりあえず食べます。ヤバくなったら、お腹殴って吐き出させてくださいね」


 理人は笑いながら伝える。ただし、普通に本音だ。

 毒物だった場合、死に至る可能性がある。


「わかったわ。パンチには自信あるから……!」


 澄華は腹パンの予行演習を始める。


 理人は思う。これもう、吐き出させる前提の動きじゃん……。

 つか、キレ凄いな。内臓ごと出ないだろうか……。


「……では、実食といきます。いただきます……」


 震える手を懸命に動かし、一口のナニカをすくう。


 ごくり。思わず唾を飲む。

 ――ゴッド……まだ死にたくありません。どうかご加護を俺に――。


 ぱくり、と口に入れる。


「む? こいつはぁ……。一言で表すと黒炭こくたん。黒炭だ……。圧倒的な炭感。その後を追うように脂でギトギトになっているライスが追いかけてくる。まるで、炭と脂の高速水車だ。片方が味を強調したら、その直後にもう片方が味を強調してくる。一口食べただけなのに、既に五十回は口に入れたような満足感がある……」


 理人はただただ、頭に浮かんだ言葉を口から出していく。


 コトハがゆっくり近づき、尋ねてくる。


「青山書記……。勝者はどちらですか……?」


 一息間を空けて答える。


「勝者は……オカルト研究部チームっす! じゃあ、俺はこれで……!」


 理人は駆け出す。

 とりあえず、トイレに行こう。

 吐きまではしないかもしれないが、万が一がある……!


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