二十三話 ヒロインズ集合!
二日後。
「いやぁ、異能の能力で出血を止められてよかった。そこまで酷い状態じゃかったから、早めに退院できたっす。まあ、しばらくは無茶はできないっすけどね……。さて、学校に向かおう」
理人は生徒会室に向かう。
生徒会室には澄華しかいなかった。
「退院おめでとう理人。もう動けるの?」
澄華はいつもの冷静な雰囲気で尋ねてくる。
「ばっちりっす! まあ、無茶はできないっすけどね」
理人は意識的に明るく笑う。
「そう……。それはよかったわ…………」
澄華はそう言い、黙り込む。
「会長……?」
「……その……退院祝いよ。これ……」
気恥ずかしそうに澄華は高級そうな紅茶を渡してくる。
「えっ! これいいんすか! めっちゃ美味しそう……!」
思わず理人はテンションが上がる。
「助けてくれたしね。そのお礼でもあるわ。ありがとね、理人」
澄華は微笑む。
「いや~、こんな良い紅茶もらえちゃうなら、頑張った甲斐があるってもんすよ! 困った時はいつでも言ってくださいよ? 会長?」
「はいはい。わかってるわ。理人も景伍も、みんな頼りになることがよくわかったから」
澄華は自然な明るい笑顔を見せる。
すると、生徒会室の扉がノックされる。
「どうぞっす~!」
理人が返事をする。
「理人お兄ちゃん! 入院してたって聞いたから! 澄華お姉ちゃんを守ってくれてありがとう! 本当にありがとう!」
糸が泣きながら、抱きついてくる。
「全然大丈夫っすよ。いつも会長には助けてもらってるし、そのお返しだよ」
理人は糸を数回なでる。
「……あ、そうだ。理人お兄ちゃんが、澄華お姉ちゃんを守ってくれたお礼!」
糸がアールグレイの高級紅茶を渡してくる。
「理人お兄ちゃん、アールグレイ好きだったよね?」
「うん、アールグレイ好きだよ。でも、さっき会長に紅茶もらったところだからな……。そんなにたくさんもらうのは申し訳ないよ」
理人は澄華と糸の顔を交互に見る。
「いいんじゃない? 理人への感謝を紅茶で表わしてるんだから。もらっておきなさい」
澄華が少し笑いながら言葉にする。
直後、再び扉がノックされる。
「今日は来客が続くっすね。どうぞっす~!」
理人の促しで、扉を開けたのは白百合だった。
「青山先輩~! 入院してたって聞きました~。心配だったんですよ~」
いつもの間延びした話し方で白百合が言葉を紡ぐ。ただし、目は真剣そのもので、心配してくれていたことが伝わってくる。
「白百合さんまで……。……俺は幸せ者っすね。怪我も治ったし、大丈夫っすよ!」
理人は白百合の方を見て、笑顔を作る。
「そうですか~! よかった~。本当によかった~!」
白百合は自分のことのように、安心した顔をする。
「あと、退院のお祝いもあるんです~。糸ちゃんから紅茶が好きだって聞いたから、色んな味の紅茶セットです~」
白百合が紅茶セットを渡してくる。
「ええ! 白百合さんまで⁉ ここにいる三人みんなが、紅茶くれたんすよ。こんなことあるの⁉」
理人は驚きの声を上げる。
「みなさん考えることは一緒なんですね~。いつも助けてもらってるお礼です~」
白百合は柔和な笑みを浮かべる。
「ええ……ええ~! そんなこと言われたら、嬉し過ぎるんだけど……。ちょっと涙出てきた……」
理人はハンカチで涙をぬぐう。
「よし! 決めたっす! 今からお茶会しよう! みんながくれた紅茶と、俺の持ってきてるクッキーで!」――。
この日飲んだ紅茶はとても美味しかった。
みんなが笑顔で話している様子を見るのも嬉しかった。
ただ、少し気になったことがある。
どことなく、三人が火花を散らすように、殺伐とした雰囲気になる瞬間があったのだ。
気のせいかもしれないくらい一瞬のことだったが。
まるで、みんなが一つの欲しいものを狙っているかのような…………。