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二十二話 高飛車系女子の感謝

 病室にて。


「理人……今日は私なんかのために……。ごめん……。ごめんね……」


 澄華は泣きながら謝り続ける。


「だから、大丈夫ですって会長。異能のおかげで出血ある程度止めたし、後遺症も残らないんすから」


 理人は大げさに笑ってみせる。


「そういう問題じゃない! 私のせいで理人が怪我をした。下手したら、怪我で済まなかったかもしれない。そう思うと、私……」


 澄華は更に大粒の涙を零す。


「……もう……。いつもみたいに傍若無人に振る舞ってくださいよ。会長は俺にとってヒーローなんですから。調子狂っちゃいますよ」


 理人は困ったように頭をかく。


「……私はヒーローなんかじゃない! 今回だって怖くて、理人に助けを求めた……」


「俺が助けたかったから、助けた。それだけです。それに、今回は俺から会長に話を色々聞いたから、気にすることないですよ」


「それでも…………」


 澄華はセーラー服の裾をギュっと握りしめる。


「……会長は小学生の頃、チビ、チビっていじめられてた俺を助けてくれた。『寄ってたかって、クソダサいことすんな』って。俺は救われたんです。会長の行動……勇気に」


 一呼吸空けて、続きを話す。


「会長は一学年上でしたけど、男子六人が相手だった。それでも、声を出してくれた。俺はそれ以来、会長みたいに人を助けられる人になりたいって思って生きてます」


 理人は昔を思い出し、穏やかな笑みを浮かべる。


「それは理人の理想とする、私よ! 実際の私は、大事な人に怪我をさせて、ピーピー泣いてる小心者よ……」


 澄華は震えながら言葉を紡ぐ。


「小心者……いいじゃないすか。俺だって小心者っすよ? 一人じゃ怖くて何もできない。いつも、会長の言葉があるから、自信を持って行動できてるだけ。会長が自分のことをどう思おうと、会長は俺のヒーローっす」


 理人は心の底から自分の思っていることを伝える。表情だけでなく、身体全体からそれが伝わるように、自分の胸に手を当てる。


「そんなの理人の理想よ……。私が本当のヒーローなら、こんなことにはならなかった……」


「ヒーローって一人で戦ってる訳じゃないと思うんすよね。仲間もいるし、応援してくれる人もいる。みんなで戦ってるんだと思う。会長も同じです。会長を俺がヒーローだと思っているからこそ、一緒に戦いたいし、力になりたい。それはいけないことですか……?」


 理人は真っ直ぐ澄華を見つめる。


「…………そんな風に思ってくれてたなんてね……。嬉しい。今日はごめ……いや、ありがとうね、理人。理人も私にとってのヒーローだよ……」


 澄華はそう言い、少しずつ理人に近づく。


「……会長……?」


 止まる気配のない澄華の顔が鼻先までくる。


「理人……私…………」


 澄華が艶っぽい声を出す。表情が……仕草がいつもとは明らかに違う。


「会長…………」


 理人は思わず、澄華から目を離せなくなる。




 その時、病室の扉が開けられる。


「理人氏! 今日は入院なのでしょう。差し入れを買ってきましたぞ!」


 景伍がノックをせず、そのまま入ってくる。


「り、理人……! 髪にゴミついてた! 取ってあげたから! も、もう大丈夫よ!」


 澄華はワタワタと慌てながら、理人から離れる。


「か、かか、会長。ありがとうございます……!」


 理人も焦りから、噛み噛みになりながら、応答する。


「むむ……? 入ってきてよかったでござるか……?」


 景伍が様子の変な理人達を見て、疑問を投げる。


「大丈夫よ……! 差し入れご苦労様! そ、それじゃ、私は帰るわ!」


 そそくさと澄華は病室から出ようとするも、足を止める。


「二人共、ありがとう! 本当に助かったわ! この恩は一生忘れないわ」


 澄華は頭を深々と下げる。


「そんな、そんな。会長を守るのも我らの務め。お気になさらず」


 景伍も深く頭を下げる。


「俺も同じ思いっす! 気にしないで!」


 理人は笑顔で明るく声を出す。


「理人……早く傷治しなさいよ……。……それと、必要なものがあったら、持ってくるから言うのよ」


 澄華は真っ直ぐ理人の目を見つめる。どことなく、熱を帯びたような瞳だ……。


 そして、病室の扉から出ていく――。



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