二十話 高飛車系女子 守護大作戦!
理人は澄華と話し終えた後、そのまま景伍のクラスに向かう。
「景伍、今すぐ相談したいことがあるっす。ちょっと、空き教室で話聞いてくれないっすか?」
理人は真剣な表情で話しかける。
「これは理人氏。何やら火急の問題のようですな。もちろん聞きますぞ」
景伍はすぐさま、理人の言葉に応じる。
◇◇◇
景伍は理人から事情を聞き、怒りの表情を浮かべる。
「ふざけた奴だ……。そのような輩、捨て置けぬ……! 必ずや我等で捕まえましょうぞ……!」
「ありがとう。景伍……。会長は俺達が必ず守る……」
理人は心に誓う。澄華を……この平和な日常を守り切ると……。
「そうだ。理人氏、拙者に作戦が。この方法ならもしかしたら、争わなくても大丈夫やもしれませぬ」――。
◇◇◇
放課後。
理人と景伍は澄華と合流していた。
「会長。じゃあ、帰りましょうか。今日は俺達がいますから、安心してください」
理人が澄華を安心させるようにゆったりと話す。
「ありがとう。でも、本当にこの作戦でいくの? 大丈夫かしら……?」
澄華は心配そうに理人と景伍を見る。
「うまくいけば、ストーカーが諦めるやもしれませぬ。それに、何か行動を起こしてきたら、そこを拙者が捕まえまする。この動けるデブは合気道を修めております故、心配いりませぬぞ!」
景伍がファイティングポーズを取ってみせる。
「それは安心だけど……」
澄華は顔を赤らめる。
「会長、この前したじゃないすか。恋人偽装。それを今回もするだけっすよ」
理人は冷静に声を出す。
「……あのねぇ……。この前はキャッチボールデートだったのよ……? 今回は本物の……恋人のフリをするの……。気の持ちようが違うでしょう……?」
澄華はモジモジと身体を動かす。
「……会長、そういうとこ気にするんすね。『それくらいやってあげるわよ!』とか言いそうなイメージでした……」
理人は素直に言葉にする。
「あなたねぇ。私のことなんだと思ってるの……? これだから、青山書記は……」
澄華はやれやれといった様子で手をあげている。
「何か、すごくバカにされてるような……」
「まあまあ、お二人共そう言わず。とりあえず、恋人に見えるように、恋人繋ぎでもしてはいかかですかな?」
景伍が真面目な顔で提案してくる。
「へ⁉ 恋人繋ぎ⁉ そんなのできる訳ないでしょう!」
すぐさま、澄華が顔から手まで赤くして否定する。
理人は思う。すごい即答……。流石に傷つくなぁ……。
「会長……。じゃあ、どこまでなら許容できるんすか……?」
理人は声のトーンが数段落ちながら尋ねる。
「…………腕組み」
ぽつりと澄華は呟く。
「……腕組みならいいんですね」
理人は言葉を素直に繰り返す。
「そうよ! もう! 何回も言わさないで!」
澄華は再度顔を赤くする。
「はいはい。わかったっす。…………じゃあ、早速……」
理人は心臓が早鐘を打っているのを感じながら、腕を軽く空ける。
「…………はい。……行くわよ」
澄華は恥ずかしそうに腕を組んでくる。
理人も澄華も慣れていないからなのか、距離感が難しい。
セーラー服の上からでもわかる、豊かな胸が腕に当たっている。
「か、会長……。そのぉ……胸……当たってます……」
理人は澄華から目を逸らしつつ、ぼそっと呟く。
「な! この変態! そんなとこばかり意識してたの⁉」
澄華はビンタをしてくるのではないか、と思うような勢いで言葉を飛ばす。
「わー! 暴力反対! ……仕方ないでしょ……? 俺も男だし、胸当たってたら、流石に気になっちゃいます……」
「…………まあ、正直に言ったし、悪気はないのか……。少し、距離を空けるわ」
澄華は少しばかり腕組みの距離を空ける。
――はぁ~心臓に悪いよ……。前から見た目でわかってたけど、会長胸大きいな……。ってコラコラ、今はストーカーがいるかもしれないんだ。エッチなこと考えちゃダメだぞ俺……! ――。