十五話 オカルト大作戦
「糸ちゃんの言う通りっすよ。まだ諦めるには早い。ちなみに、今までどんなことしたんですか?」
「ええ、そうね。部長のあちきがこんなんじゃダメね。ごめんね糸ちゃん。今までやってきたことは、まずアンテナを使って宇宙人と交信をしたわ。宇宙人でも部員と認められれば解決するし。あとは、呪いの儀式をして部員になるように仕向けたり……」
「ちょっと! めちゃくちゃじゃないっすか! それじゃ部員増えないっすよ!」
「待って! 魔法陣使って、異世界召喚も試したわ!」
「その行動足しても評価上がらないですよ……⁉」
理人はため息をつく。
「理人お兄ちゃん。一応、普通の勧誘もしてるよ。掲示板に部員募集ポスターを貼ったり、歩いてる生徒に声をかけて、部室を見に来てもらったり」
糸が近づいて来て、話し出す。
「あ、なんだ、ちゃんと勧誘活動してるんじゃないすか! さっき聞いた内容だけだったら、絶対増えないですから……」
「でも問題が……。何人かは、部室を見に来てくれたんですけど、入部はしてくれなかったんです……」
「ありゃ……。何か心当たりはあるっすか?」
「正直、ないです。名巣さんの素晴らしい、宇宙人交信パフォーマンスを披露したんですけど、それでもダメで……」
「…………それがダメなんじゃ……?」
「え?」
糸は素朴な疑問を口にしたようだ。
「え?」
理人は一呼吸置いて続きを話す。
「なんとなくの想像っすけど、宇宙人との交信は初心者には難しいんじゃないかと思う。あそこに置いてある大きなアンテナ使うのかな?」
「そうです! あのアンテナを頭にすっぽり被って、宇宙人と交信できるまで、呼びかけ続けるんです!」
「は……? え、それを見学に来た人に見せたの?」
理人は背中に冷や汗をかく。
「そうです! もちろん、見学の人にもしてもらいましたよ? 宇宙人からの声が聞こえるまで、ずっと……」
「それ、聞こえた人いたの……?」
「なんか、一時間くらいしたら、みんな聞こえたって言ってました! すごい素質の持ち主の方々です!」
「ほぅ……」
理人は思った。絶対、この部活ヤバいと思って、テキトーに聞こえたことにして、逃げただろ……と。
「私の最高のパフォーマンスでもダメとなると、打つ手がなくて……」
名巣は心底どうしたらいいかわからないという顔をする。
その思考を変えたらよいのでは? と口まで出かけたが、我慢することにする。
「え~と、まず、宇宙人交信パフォーマンスをやめましょう。もっと、オカルトに興味を持ってもらえることをしよう。たとえば、そうだな……占いとかどうっすか?」
「占いね……。たしかに、それなら、見学に来た人を自然と導きつつ、部員にできるわ……」
名巣は不気味な笑みを浮かべる。
「ちょっと、ちょっと! 何で、洗脳するみたいなやり方で部員増やそうとするんすか! ダメですよ!」
「ダメか……。オカルトの効果を見たかったのだけど……」
「名巣さん……。人間のこと実験対象か何かと思ってます?」
「おたく失礼ね……。そんなことないわ。どうなっていくのか興味があるだけ……」
名巣はごく真面目な顔で答える。
「なんかサイコパスみたいな回答なんですけど⁉ 怖いよ。大丈夫なの、この人⁉」
「大丈夫だよ。理人お兄ちゃん。最低限の境界線は引けてる人だから」
糸がごく自然と声を出す。
「あぁ~。なるほど……。とりあえず時間もないし、一旦気にしないことにするっす。さて、どうするかな……。あ! こんなのどう? タロット占いコーナーを校内に作って、無料で占いをするんす。水晶とかも使えるなら使って!」
「わぁ! それ、名案です! やっぱり、理人お兄ちゃんは頼りになる!」
糸が抱きついてくる。
「ちょ、糸ちゃん。小学生の時とは違うんだから、抱きついたりしちゃダメ!」
理人は急いで注意する。
小学生の時とは状況が違うのだ……。
身体は小柄だが、たしかにある豊かな胸のふくらみとか……。
っといかん。糸ちゃんは澄華の妹で、自分にとっても妹のような存在だ。
その子に欲情するなんて、もってのほかだ。
「えぇ…………。理人お兄ちゃんのケチんぼ……」
糸は明らかに不貞腐れたような態度になる。
「ケチんぼじゃないよ。もう……。あ、でも嫌とかじゃないっすからね。そこは誤解しないで……」
糸に嫌われたくない一心で、思わずフォローを入れる。
「……じゃあ、いいです。許します。でも、私も成長したってことも覚えていてほしいかも……」
糸は微笑みを浮かべた後、少し口をとがらせる。
「ありがとう。覚えとくよ。というか、体感したというか……。あ、いや何でもないっす!」
「……理人さんって、案外鈍感なのね……。まあ、あちきがどうこう言うことじゃないけど……」
名巣は後頭部に手を回しながら、呟く。
「え? 鈍感?」
「何でもない。さっき言ってた案を実行するためには、どうすればいいの?」
「顧問の先生に言って、校内活動を認めてもらえればいいと思う。俺もついていくし、一緒に提案しよう!」
「それは助かる。早速行きましょう」
名巣が賛成し、理人達は顧問のもとへ行き、先程の案を伝える。
生徒会書記の理人がいたこともあってか、提案はスムーズに受け入れられた。