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K−SATとは、公安が管轄する事案の為の「殴り込み」部隊……言わば、広域公安版のレンジャー隊だ。
しかし、人数は、俺達よりも少ない。
俺達「レコンキスタ」のレンジャー隊は、基本的に人口20万〜30万を1つの「小隊」で管轄している。
基本的に異能力犯罪は、どこで起きるか判らない。
だが、公安関係は違う。
今や、外事・右翼・左翼・カルトのいずれでもない「何でも屋」の「特事」が公安内での最大派閥になり……ここ20年ぐらいの国際情勢の急変の連続のせいで外事関連のノウハウが役立たずになり、公安内では「外事は障害児」なんて酷い陰口が叩かれてるそうだが……それでも、公安管轄の事件は都市部……それも大都市に集中している。
20万都市で1件につき、100万都市で5件ではなく、20万都市で1件につき、100万都市では10件か20件ぐらいの比率だ。
なので、九州の大半の県でK−SATは1個小隊か2個小隊。「関東難民」の流入のせいで、人口700万を超えるのも時間の問題となった福岡県でさえ、5個小隊、しかも、福岡市と北九州市に2つづつで、5つ目は、佐賀県第2小隊も兼ねていて、久留米の隣の佐賀県鳥栖市に駐留している。
鳥栖市内には、高速道路・国道・バイパスなんかが集中していて、人口はそれほどでもないが、複数の大手のネット通販業者やチェーン展開しているスーパーやホームセンターや量販店の流通センターが有ったりする。K−SATの福岡県第5小隊 兼 佐賀県2小隊も、鳥栖市内でも、民間企業の「流通の拠点」的な施設が集中してる場所に詰所が有って、早い話が、福岡市方面・佐賀市方面・福岡県内でも久留米以南のどっちにも、車で、すぐ向かえるようにしてる訳だ。
なので……。
公安管轄の事件が久留米市内で起きていないのなら、K−SATが久留米に居る筈が無い。
逆に、公安管轄の事件が久留米市内で起きているのなら……。
いや……待て。
K−SATは、俺達「レンジャー隊」が使っているのと同型で色違いの強化装甲服を使っている。
こいつらは……見ての通り、そんな装甲服は着装ていない。
でも……。
フン……。
奴らは、俺の視線が向いている先……背広の不自然な膨らみに気付いた塗炭、有るか無しかの、微かな鼻息と共に小馬鹿にしたような表示になる。
「ちょっと上まで案内してもらえますか?」
奴らの片方が、そう言いながら……背広の懐に手を入れ……。