(5)
高校生らしいが身長150㎝台前半の女の子が使ってた自転車に、身長180㎝近いの俺が乗ってる……。
乗りにくい……。
クソ……走った方が早いかも……。
通行人に変な目で見られてる気がする。
まぁ、警察の制服……それも、明らかに荒事が起きそうな現場に向かう時用のヤツ……を着た奴が、これまた、明らかに体の図体と合ってない小さめの自転車に乗ってる……。
まぁ、いいか……。
とりあえず、レコンキスタ久留米支局の前まで到着。
市役所の裏手に有る、いくつかの広域警察の支局が入ってるビルだ。
「支局前まで到着しました」
『よし、気を付けろよ』
念の為、職場支給の携帯電話を使って、支局オフィス内の防犯カメラにアクセス。
『ところで、お前、私用じゃない方の携帯電話はどこだ? 何で車ん中に見当たらねえんだ?』
……。
……えっ?
「あ……あ……」
『おい、まさか、自分で持ってったのか?』
「え……え……」
『おいッ‼』
「はいっ‼」
『ええっとだな……まず、深呼吸して、リラックス』
「は……はいッ‼ 了解しましたッ‼」
『落ち着いてるようには思えねえが……まあいいや……。あたしの質問に答えろ』
「はいッ‼」
『仕事用の携帯電話は手元に有る、と……』
「はいッ‼」
『その携帯電話のGPS発信は?』
「ええっと……おっと……その……」
『ONになってんのか? ウチの勤務先の奴なら、お前の居場所が判るように……』
「は……はい……」
『その携帯電話で……何か、職場のシステムにアクセスしたりとかは……』
「あ……あ……は……は……は……」
『はいッ‼ 深呼吸ッ‼』
「はいッ‼」
『落ち着いたかッ‼』
「はいッ‼」
『仕事用の携帯電話、今、何に使ってる?』
「あの……オフィス内の防犯カメラに……」
『その映像って……オフィス内のサーバーを経由してるよな?』
「あ……」
『隊長が……現状を正確に教えられねえんなら……』
……あ……。
ウチのオフィスは……今……何者かに占拠されている。
そして、もし、そいつらが……猿渡の命を狙ってる警察官なら……ああ……県警とか他の広域警察でも、その手のシステムは基本的に一緒の筈……。
隊長のPCの電源がONになってる状態で、職場を占拠されてたりしたら……。
「あれ? 入院したって聞いてたんですが、退院されたんすか?」
その時、俺に、声をかけてきた奴が居た。
「え……ど……どちら様?」
何かがおかしい。
地味な背広。絵に描いたようなサラリーマン風。……そんな奴が2人。
でも、歩き方や姿勢が……明らかに……戦闘訓練を受けてるヤツのモノ。ガタイも結構いい。
「広域公安のK−SAT隊の者ですよ。ほら、新人の時の訓練で一緒だった……」
えっ?
いや、待て……。