(4)
「大体、何で『猿渡が逃亡した』なんて話を信じた?」
車に乗り込んで、しばらく経ってから、副隊長が、そう言い出した。
「え?」
「猿渡は、今、ロクに歩けねえほどの怪我をしてるんだよッ‼ ど〜やって逃げんだ? ど〜やって?」
「いや、入院中だから知らなかったんですよッ‼ ん? ちょっと待って下さい……。じゃあ、猿渡は……」
その時、車内の無線機に着信音。
『えっと、こちら隊長の中島だ。猿渡を収容してた独身寮から連絡が入った。逃亡しようとした猿渡を射殺したそうだ』
何のギャグだ、おい? 脚本家の給料をケチった安いドラマやアニメか?「猿渡は無事なんですか?」と言おうとした途端にこれだ……。
「了解。一旦戻ればいいですか?」
助手席に居た俺は、そう応答した。
『そうしてくれ』
俺は無線通話を一旦切り……。
「ん? おっと……丁度良かった」
何故か副隊長は車を路肩に寄せて……。
「おおいッ‼」
車から出た副隊長は大きく手を振る。
「何やってんだ? 仕事中じゃないのか?」
副隊長にそう言ったのは……自転車に乗っていた小柄な高校生らしい女の子。
「丁度良かった、自転車を貸せ」
「は?」
「自転車を貸せ。急に必要になった」
「何か……嫌な予感がするけど……壊すなよ」
「わかってる、わかってる」
「あと、バス代よこせ」
「へっ?」
「ここから歩いて高良山の近くまで帰れってのか?」
「わかった、わかった……おい、おっと、どっちか小銭持ってるか?」
「誰ですか……それ?」
「ウチの妹。この近くの高校に通ってる。よし、池田、この自転車で支局まで戻って、隊長を助けて来い。私と大石は猿渡の阿呆がどうなったかを確認する」
「了解」
隊長の名字は……「なかじま」であって「なかしま」じゃない。
わざと「なかしま」と名乗ったのは……「マズい事が起きてるが、無線では話せない」って事を報せるチーム内の合言葉だ。
「あと、念の為、後ろのトランクに積んである簡易式の突入装備を持ってけ」