(14)
俺達は、地下倉庫に入り、まずは、俺が、強化服を着装。
「よし、手動承認するぞ」
まず、俺の強化服の制御コンピューターに有線LANで接続しているモバイルPCから隊長と庶務担の重松さんがパスワードを入力。
ガコン。
ヘルメットに付いているバイザーが俺の目を覆う。
バイザーの裏側の両眼立体視式の小型モニタにも電源が入り、次々と制御コンピューターの起動ログが表示され……ん?
何か、今、気になるメッセージが表示されたよ……う……な……。
「動くか?」
「え……ええ……」
モニタの表示はバイザーの表に付いているカメラアイのものに切り替わる。
ためしに、肩・膝・肘・腰を動かしてみるが……パワー増幅用のモーターは問題なく動いている……ようだ……。
「じゃあ、次は……新人さんのどっちかが……」
「ちょっと待って下さい、これ、マズいです」
「えっ?」
画面の端の方に、とんでもないモノが表示されていた。
アンテナ・マークだ。
最悪な事に受信状態は超良好。
つまり、この強化服の制御コンピューターは、警察用の広域ネットワークに接続されている。
と言う事は……。
「上のオフィスのルーターをクラッキングした誰かは、この強化服が起動された事に、遅かれ早かれ気付き……」
次の瞬間、視界が真っ暗になった。
そして、見えるのは……たった1行のコマンド……「shutdown -h now」。
「おい、何で、制御コンピューターが……って、まさか……もう……」
「気付かれたみたいです。この強化服が起動した事に……」
今度、表示されたのは……制御コンピューターの電源OFF処理のログだった。
「あの〜」
その時、妙に間延びした声がした。
「えっ?」
声の主は……本部のIT技術屋さん。
「1つだけ、その強化服を起動させる方法が有りますけど……」
「な……何? どんな手?」
「いや、有ると言っても、完全な状態の起動じゃないですし、あと、下手したら、私らも始末書書かないといけなくなりますけど……」
「い……一応、どんな手か、言ってもらえます?」
「わざと、ぶっ壊して起動するんですよ」
「この強化服を?」
「ぶっ壊すと言っても、部品1つですけどね」
「何の部品?」
「無線通信用のユニットです」
あ……たしかに、それなら、起動しても、警察用の広域ネットワークに接続出来なくなる以上、逆に、警察内に居るクラッカーも、強化服が起動した事を検知出来なくなるし、リモートで制御コンピューターに干渉する事も出来なくなるけど……でも……。
「ただし、他の強化服とのデータの送受信も出来なくなります。チーム内の連携は、大きな制限を受けます」
「ちょ……ちょっと待って下さい」
庶務担の重松さんが何かに気付いたような表情で、そう言った。
「えっと……自機のカメラが撮影した映像を他の人にも見せるとか……それだけじゃなくて……ひょっとして単なる無線通話も……」
「はい、その通りです。会話は基本的に直接話す必要が……」
「あ……あの……隊長、こんなケースって、現場指揮官用のマニュアルなんかに……」
「無い、無い、無い。こんなケースを想定した訓練も座学も、現場指揮官向けの教育でやった覚え無い」
やれやれ……冗談じゃない。
「ひょっとして、官給の強化服着て、手に銃持って、連絡は個人用の携帯電話でやるんですか?」
「それしか無いな……」
「で、それやって不足の事態が起きたら、その場で解決策を考えろと」
「まぁ、そうだな……」
何だ、こりゃ?
こんな馬鹿馬鹿しい状況、昔、TVで放送されてた子供向けの戦隊モノでも聞いた事ねえよ。
「とりあえず、秋光さんと和田さん、先に、眞木達の応援に向って下さい」
「は……はぁ……」
「わ……わかり……ました」




