(9)
簡易突入装備の中の巻取具とフックが付いたロープを取り出し、そして、隣のビルの我々のオフィスが有る階に突入しやすく……かつ、一目に付かない場所を探し……探し……えっと……あれ?
「あの……何ですか、これ?」
条件に合う場所を見付け、落下防止用の手摺りにフックを取り付けようとした時、別のモノも見付けてしまった。
「ん?」
「えっ?」
同じ場所に取り付けられたフックが2つ。
その先からロープが伸び……。
「あの……ウチのオフィスを襲撃してきた連中は……その……?」
「あ……エレベーターで堂々と入って来た」
「じゃあ、これ、誰が使ったモノなんですか?」
「レンジャー隊の隊長が俺達を逃がした後に、更に別の誰かが、ウチのオフィスに……」
「ど〜なってんですかッ?」
「こっちが知りてえよッ‼」
「どうしま……ん?」
その時、無線機に着信音。
「もしもし……」
『おう、中島だ』
隊長が電話や無線通話や「なかしま」と名乗る時は「マズい事が起きてるが、口頭では伝えられない」を意味する仲間内での決め事だが……「なかじま」と名乗る時は「問題なし」か「問題は解決した」の意味だ。
「あ……あの……」
『ウチのオフィスを襲撃した連中は鎮圧した』
「へっ?」
『すぐ、オフィスに戻って来い。つか、今、危険なのは猿渡の阿呆だ』
「あの……えっと……」
特務要員の和田さんが、頭を掻きながら……「どうなってんだ?」って感じの表情で……なのに、何の感情もこもってない口調で……。
「何の為、俺ら、ここまで、わざわざ上ったんですかね?」
……知るかッ‼