表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

レッドライン

「奴の本名は知っているが、そんな情報には何の意味もないんだ……最初から」

DCコミック『バットマン:スリー・ジョーカーズ』より


「あの……3ヶ月の減俸って、何ですか?」

 少年兵(と言っても、成長抑制剤の投与で生み出された「子供に見えるだけの立派な大人のテロリスト」だったらしいが)に至近距離からスラッグ弾をブチ込まれて(幸いにも強化服の装甲のせいでダメージは軽減されたが)肋骨を骨折した俺は、病院から退院して職場復帰した初日に、とんでもない事を言い渡された。

「あの事件で生き残っちまった4人全員減俸だ。表向きは、仲間を殉職させたペナルティだが……」

 隊長(レッド)は、ホントにマジでガチで、すまなそうな感じで、そう説明し始めた。

「いや、あの状況では助けられる奴なんて……待って下さい『表向き』?」

「あ〜。すまん、お前の入院中に、ちょっと表沙汰に出来ないやらかしをしたのが上にバレてな……早い話が、お前は俺達のやらかしに巻き込まれちまったんだ」

「ちょっと待って下さい、何やったんですか?」

「広域組対(マル暴)に猿渡ってヤツが居ただろ」

「ええ……あの評判が悪い人ですか?」

「あいつが、警察内部の情報を『安徳』に流してやがった」

「えっ? ちょっと待って下さい、どんな情報ですか?」

 安徳とは……九州三大暴力団の1つ「安徳ホールディングス」の事だ。

 上層部メンバーの大半が妖怪系や変身能力者……主に河童系……で占められている……と言っても、九州三大暴力団の残り2つも、何故か、似たよ〜な感じなのだが……。

「個人情報だ」

「はあ?」

「各警察機構(カイシャ)のエラいさんの子供の通学路に、エラいさんの親が入ってる老人ホームに……あと……まぁ、猿渡の阿呆が直接そんな情報を渡した訳じゃねえが、奴が渡した情報を手掛かりに突き止めやがったらしい」

「待って下さい、それって……」

「そうだ。福岡県警と県内の広域警察の支局は……安徳に金玉(タマキン)握られたも同然だ……。あ、あと、佐賀と山口も似たよ〜な状況らしい。熊本と北九州市では、話を聞き付けた龍虎興業と青龍敬神会が似たよ〜な真似をやり始めてるみて〜だ。ついでに、福岡と隣県の検事と裁判官も……」

「それって、ヤクザを合法的に摘発出来ないも同じじゃ……」

「あ、大丈夫だ、今の時代は『正義の味方』が……」

「あの、隊長、警察が違法自警団を頼ってどうするんですかッ⁉」

「……」

 何だ、このビミョ〜な雰囲気……嫌な予感が……。

「あの、隊長、まさか、広域組対(マル暴)警察官(サツカン)がヤクザとつるんでたと思ったら、ウチは違法自警団とつるんでるなんて事は……」

「……」

「あの……」

「おいおい話す……本人も、つい最近知った話でな……」

「今話して下さい」

「副隊長の身内に……『正義の味方』のメンバーが居たらしい」

「あの、副隊長は死にましたよ、俺が入院した時の事件で……」

「眞木が副隊長に昇格した。今、技術部門に頼んで副隊長(ブルー)パワー型(イエロー)複合型(ハイブリッド)の強化服を作ってもらってる」

「で、どっちの副隊長ですか、死んだ方と昇格した方の? 身内に違法自警団やってる屑野郎が居たのは?」

「おいおい話す」

「いい加減にして下さい。で、その新しい副隊長の眞木さんは?」

「自宅の引っ越しで有給取ってる」

「はぁ?」

「あいつの自宅とあいつの妹達の通学路も猿渡にバレててな……猿渡の野郎、それをネタに眞木を(スパイ)にする気だったらしい」

「はぁ……なるほど……。隊長が知ってるって事は……眞木さんが(スパイ)になるのは……防げ……あの……」

「何?」

「ウチのチームの誰かが、猿渡の阿呆を袋叩きにしたりとかは……」

「無い無い無い……ただ、ちょっと県警の久留米署の柔道場で……練習に付き合ってもらった時に事故が起きてな……そのせいで……まぁ、何だ……みんな仲良く減俸だ」

「あの……それって、どう考えてもリンチ……」

「事故だ、事故」

「事故が、何で、表沙汰に出来無いんですか? 警察官(サツカン)警察官(サツカン)をリンチしたって考えた方が自然でしょ、それッ⁉」

「いや、マジで眞木の家族まで巻き込まれたのに、あの阿呆がやった事を表沙汰に出来ねえんだぞ。下手すりゃ、猿渡の糞野郎、同じ警察官(サツカン)をヤー公に売りやがったのに、刑務所にブチ込まれずに済むどころか、自己都合退職扱いで、退職金も年金もちゃんと出て、再就職の履歴書に『以前の職場での賞罰:特になし』とか堂々と書いても詐欺にならね〜んだぞ。んな理不尽な話有ってたまるかッ‼」

「あの……事故でもリンチでもいいけすけど……向こうは、どの程度の負傷だったんですか?」

「ああ、人生八〇年として……残りの四〇年以上は、杖がねえとマトモに歩けねえそうだ」

「あのですねえ……って、おい、お前、今、ボソっと『ざまあみろ』とか言っただろッ‼」

 俺は……近くの席に居た同僚を、そう怒鳴り付けたが……奴は、素っ恍けた表情(かお)で鼻歌を歌っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ