24:ログの確認
ログインして最初にしたのは周囲の確認。
そこは最後にログアウトした場所で、熱砂の街ジュピトリスが遠くから望める砂漠の一角だった。
「ふむ――」
ログイン時の出現地点について考えてみる。
昨日夕食時にログアウトしたのは何度目かのカトブレパスチャレンジのときで、大神殿で蘇生してそのままログアウト、食事を取ってから再度ログインした。
「あのときも大神殿に出たから……ログアウトした地点に再出現するか、もしくは最後に一番近かったアライバルオーブの場所に出現するか、かな」
この点に関してはアライバルオーブから離れてログアウトすれば簡単に検証できる。
が、別にそれを今やる必要はない。やってればわかることだし、何なら調べなくても経験者に聞いたっていいしな。
ステータス画面を開き、フレンド欄を確認する。
現時点でオレのフレンドは二名。山風はオンラインだが、ウィスタリアさんはオフラインだった。
「うーん……」
ウィスタリアさんはいないか。
彼女になら聞きやすいし、ワンチャン一緒に遊べるとも思ったのだが。
「――っと、そういえば」
彼女に前回言われていたことがあった。
エリアボス、バルトアンデルスを倒したときに出た大量のメッセージ。それをちゃんと確認しておいたほうがいい、という話だった。
過去ログを表示してみる。
ええと、バルトアンデルス後だから、ゴーレムを倒したあとのログだよな。
『『守勢の極意』のスキル取得条件を満たしました』
『『大物殺し』のスキル取得条件を満たしました』
『『孤高』のスキル取得条件を満たしました』
『『苦行を好む者』のスキル取得条件を満たしました』
『『剣に生きて死ぬために』のスキル取得条件を満たしました』
『『オーバーリミット』のアーツ取得条件を満たしました』
『『ワールドブレイカー』のアーツ取得条件を満たしました』
『レベルが20に上がりました。SAポイントを5獲得しました』
『等級:初級のレベルキャップに到達しました。上限解放をするまでレベルが上がらなくなります。上限解放はいつでも可能です』
『上限解放を行うとレベルの最大上限が50となり、取得スキルの範囲が拡張されます。ただし、耐久力無限の初期装備は装備できなくなります』
『第五の聖獣バルトアンデルスを撃破しました』
『撃破パーティのメンバーは『ハスキー』『ウィスタリア』です』
『エリアボスの討伐により、熱砂の街ジュピトリスが開放されました』
『未踏ダンジョンの初踏破により、称号『千変する』を獲得しました』
『このメッセージは五分後、ワールドアナウンスにも流れます』
「うわ……」
あまりの情報密度に一瞬引いてしまった。
ボス撃破後の集中力の尽きた自分がまったく読めなかったのも、これでは仕方ない。そもそも読む気が起きない。
いや、駄目だ。ちゃんと読もう。
少しずつ小分けにして読めば頭にも入ってくるはず。
まずは最初の部分だ。
『『守勢の極意』のスキル取得条件を満たしました』
『『大物殺し』のスキル取得条件を満たしました』
『『孤高』のスキル取得条件を満たしました』
『『苦行を好む者』のスキル取得条件を満たしました』
『『剣に生きて死ぬために』のスキル取得条件を満たしました』
『『オーバーリミット』のアーツ取得条件を満たしました』
『『ワールドブレイカー』のアーツ取得条件を満たしました』
これは全部内容的には同じだな。
スキルやアーツの取得が可能になったというアナウンスであり、この時点では取得できたわけではない。あくまで取得可能一覧に名前が載ったという告知だ。
だからこれがウィスタリアさんの言った大事なことだとは思えないが、念のため一つ一つ確認していく。
『守勢の極意』
取得条件:単独戦闘でボスモンスターの攻撃範囲に入ったまま20分以上ノーダメージをキープする。
スキル効果:敵の攻撃を回避、またはノーダメージで受け流した場合、次の自分の攻撃のダメージを上昇させる。
『大物殺し』
取得条件:ボスモンスターを単独で撃破する。
スキル効果:ボスモンスターに攻撃した際、追加ダメージが発生する。
『孤高』
取得条件:単独戦闘で敵に対し合計10万以上のダメージを与える。
スキル効果:パーティを組んでいない状態でのみ、攻撃力と魔法攻撃力が上昇する。
『苦行を好む者』
取得条件:初期武器初期防具のままでボスモンスターを撃破する。
スキル効果:敵のレベルが自分より20以上高い場合、防御力が上昇する。
『剣に生きて死ぬために』
取得条件:初期武器から一度も武器種を変更せずに刀剣系統の武器のみを使い続けてボスを撃破する。
スキル効果:刀剣系統以外の武器種が装備できなくなる代わりに、刀剣武器に装備条件があってもそれを無視して装備することができる。
『オーバーリミット』
取得条件:自分に変身したバルトアンデルスを撃破する。またはドッペルゲンガーや変身能力を持つモンスターが自分に変身しているときに合計50体以上撃破する。
アーツ効果:一時的にすべての能力値を上昇させ、効果時間終了後にダメージを受ける。
『ワールドブレイカー』
取得条件:聖獣を撃破した際に、自身がもっとも多くのダメージを与えている。
アーツ効果:一時的にワールドルールによる影響を無効化する。
「なるほどわからん」
どれが強いのか弱いのか、始めたばかりの自分には判断がつかない。
ただ、SAポイントはダダ余っているし、このへんで少し使ってみるのも悪くないかもしれない。個人的に気になったのは『守勢の極意』『剣に生きて死ぬために』『オーバーリミット』『ワールドブレイカー』だな。
『剣に生きて死ぬために』は縛りが強い割にどの程度リターンがあるのか不明だが、どのみちオレは刀と拳しか使わないし。
あとは水着状態だと持てるアイテムに限界がありすぎるから、『アイテムストレージ』を1レベルだけでも取っておこう。
『『守勢の極意』を取得しました』
『『剣に生きて死ぬために』を取得しました』
『『オーバーリミット』を取得しました』
『『ワールドブレイカー』を取得しました』
『『アイテムストレージLv1』を取得しました』
一気にSAポイントを消費してスキルアーツを獲得する。
なかなか気持ちいい。
「よし、それじゃあ次に行こう」
スキルアーツに関する項目は終わった。
再度過去ログを表示し、次の塊に目をつける。
『レベルが20に上がりました。SAポイントを5獲得しました』
『等級:初級のレベルキャップに到達しました。上限解放をするまでレベルが上がらなくなります。上限解放はいつでも可能です』
『上限解放を行うとレベルの最大上限が50となり、取得スキルの範囲が拡張されます。ただし、耐久力無限の初期装備は装備できなくなります』
「へえ。20でレベルキャップなんだ。ずいぶん低いな」
よくあるものだと99でレベルキャップとかじゃないか?
……と思ったが、よくよく読むと意図がわかった。
初級と上限解放後の最大の違いは初期武器を装備できるかどうか。
つまり初期装備の耐久力無限はあくまで救済措置であり、何もわからない初心者がいきなり武器防具が壊れて詰むことのないように、という目的で用意されていたのだろう。
初級のレベルキャップ解放は、『ここまでくればゲームを理解しただろうから、ここからは耐久力をやりくりして遊んでね』という制作側からのメッセージだ。
「武器に攻撃力がないなら、ずっと無銘でもいいと思ってたんだけどな……」
そんな遊び方をされたら耐久力を設定してる意味がないから、仕方なくはあるが。
オレの武器を作るつもりのヒバだって怒るだろうしな。
それで上限解放はいつでもできるとのことだが――
「やらない手はないよなぁ」
ヒバが来るまで我慢するという選択肢も一瞬浮かんだが、それはさすがにもったいない。
今日だってこれからモンスターを狩りに行くつもりだった。ヒバが来るまでの数日間にどれくらい狩りをするかわからないが、その経験値を全部捨てるというのは――ない。ナシよりのナシだ。
ウィスタリアさん曰く、このエリアのモンスターは経験値がめちゃめちゃ美味しいらしいのだ。本来なら当分先に来るはずのエリアに、シーケンスブレイク的に来ているからだとか言っていた。
多くのゲームにおいてレベルは高ければ高いほど自由度が上がる。できることが増えて困りごとが減る。レベルはなんぼあってもいいのだ。
「よし、さっそく開放しちゃうか」
ウィンドウに出ている上限解放ボタンを押す――その直前に、指が止まる。
いや待て。
上限解放をすると初期装備が装備できなくなるんだよな?
するとどうなる?
まず武器が装備できなくなる。無銘を装備できなくなって丸腰になる。だがそれはまだいい。致命的ではない。街に刀を買いに行けばいいだけだ。
――だが、防具は?
そう。今オレが着ているのはズボンタイプの水着のみ。そしてそれ以外には初期装備の道着しか持っていない。
では、このまま上限解放すると――水着以外着られなくなる。
そして最初の街を上裸で歩き回るハメになる。
いわゆる服を買いに行く服がない現象に陥るのだ。
「やば……」
それだけは避けなければならない。
まずはアポロニアに行って武器と防具を買う。
上限解放はそれからだ。
「いやあ、気づいてよかった……」
ただでさえリアルとほとんど変わらない姿でゲームをしているんだ。そんな中羞恥プレイさながらの行為をしては、せっかくの神ゲーに二度とログインできなくなってしまう。
そういうわけで、まず装備用ストレージを開いて初期装備に着替え、オレは最初の街アポロニアに買い物に向かうのだった。
一部設定の変更があったので、これまでの話の細部を修正しました。
あと、ステータス回に用語も追加しました。
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