『清水寺の速記の師僧、進命婦に恋慕のこと』速記談2091
進命婦が若いころ、しばしば清水寺に参詣していたが、仏道と速記の指南役の僧が進命婦に懸想してしまい、たちまち病にかかり、まさに死のうという状況に陥った。余りに急なことに、弟子たちはあやしみ、この病は普通の病ではありません。思い詰めず何でもおっしゃってください、お師匠様のためにも、私たち弟子のためにも、と申し上げた。指南役の僧は、実は、都の女が、参拝に来ている女がいたのだが、何度か指南して親しくなるにつれて、胸の内を伝えたくなり、この三カ月ばかり、物が食べられなくなって、蛇の道に入ろうとしているところだ、情けないことだ、ということであった。一人の弟子が、命婦のもとへ遣いに出、このことを話すと、命婦はすぐに駆けつけた。命婦は、仏の道にお導きいただいた御恩を思えば、どのようなことでも従いますのに、このように病を重くする前に、どうしておっしゃってくださらなかったのですか、と申し上げた。指南役の僧は、弟子に抱え起こされて、念珠を手でもみながら、わざわざ来てくれてありがたいことだ。法華経の第一の文をあなたに献上しよう。あなたがお生みになる男子は、摂政、関白になるでしょう。女子は后となるでしょう。男子は僧となれば大僧正となるでしょう、と言い、そのことを念じながら入滅した。この命婦は、関白藤原頼通公の寵愛を受け、後の関白師実公、後冷泉天皇の寛子皇后、天台座主覚円を生んだ上、速記検定一級を取得したという。
教訓:指南役の僧が、恋慕の情を打ち明けたとき、命婦はどうしたというのか。