春に
掲載日:2024/03/12
私は家庭を知らなかった。ここに来るまでは。
別に孤独なわけではなかった。周りには同じものがたくさんいた。しかし、その者たちとの関わりは希薄くだった。いつもお世話をしてくれる者を除いては心を開いたことがなかったのだ。
でも、ここに来てからは心を開いていられる。
「ただいま!!」
「おかえり!おかえり!」
私はよく家族の帰りを玄関で待っている。お出迎えの時は元気に「おかえり!」と言う。
「今日は学校でたくさん遊んだんだー」
「そうなんだ!」
「勉強もしっかりしたのよね?」
奥からお母さんの声が聞こえた。
「もちろん!」
用意された麦茶を彼が飲むと
「お散歩行ってくるね」
「はーい、気を付けてね」
「うん」
彼が私の方を見る。
「行くよ!」
「うん!」
いつもの散歩道、彼と並んで歩く。春の陽気。春の暖かな空気に包まれて、心までもが癒された。
「ね、変なこと聞くけど、ココアはここに来れて幸せだった?」
もちろん、とても幸せだ。
「わん、わん!」
ちょっと遊び心を




