現在地1
目の前で、1万は優に越えるような魔族が僕の方に跪いている。
この魔族たちはぼくの配下ということに体裁上はなっているが、本当は僕の上位存在がいてそいつに操られている。
いってしまえば、僕は傀儡だ。
だからどうせ、こいつらに僕への敬意なんて微塵もないのだろう。
でも、跪いてくれている。
悪い気はしない。
魔族たちが僕に敬意をはらっていないと考える理由を説明するには、少し時間がかかる。
1ついえるとすれば、僕は雑魚かったのだ。
雑魚いと損ばかりだな。
強くならなければな。
そして、俺が真の上位者となるのだ。
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ブレイブは、辺鄙な村の一人息子だった。
そこで、両親に剣術をみっちり教え込まれた。
彼は剣術に嫌気を差した。
両親が教えたのは、人殺しに特化したの剣術だった。
彼は優しかった。ゆえに、両親から教えられる剣術を忌避した。
両親は、しかし、それがわかっていても教えるのをやめない。
ブレイブは妥協して、剣術を覚えることだけはした。それでも、実践は死んでもしないと心に決めていた。
そんな決心はすぐにぶち壊された。
ある日の夜、彼の両親がブレイブを殺そうとした。
彼は本気で抗った。
教わった例の剣術も使った。
そして、両親を殺した。
あっけなく両親は死んだ。
彼の強さは最早、殺人を「生業」としそれを教えてきた両親の遥か上をいっていた。
そんな強さとは裏腹に、両親を殺した彼の心にはぽっかりと穴が空いた。
騒ぎを聞き付けた村人たちがブレイブの家にやってきたとき、既にブレイブはいなかった
ブレイブの両親の死体が無惨にも転がり、その横にブレイブが書いたであろう手紙だけが、そこに残っていた。
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