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効率厨は理屈を捨てたい。  作者: 東雲ナエル
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第四話 友達の天音さん

「えーっと、天音さんだよね?」


 大神が困惑しているので、すかさず天音をフォローする。


「自己紹介したら?」

「あ、天音結衣です。よろしくお願いします......」


 天音さん、ド緊張してるな。


「理と仲良さそうだったから連れてきた!」

「藤宮君にしては珍しい......」

「うるせぇ」

「じゃあ行こうぜ~」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ゲーセン特有の、機械音やゲームBGMが混ざった騒音が鳴り響く。


 天音が珍しいものを見るかのように辺りを見回している。


「天音さんはこういう所来るの初めてなのか?」

「はい!はじめてです!」


 緊張してる......けどそれよりもテンション上がってる。

 ひとまず安心。


「みんな~、エアホッケーやろうぜ~」

「一発目それかい!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 それから色んなゲームを遊び、あっという間に一時間が経った。


「ちょっと私、お手洗い行ってくるね」

「俺もちょっとこの大量のメダルお店に預けてくるわ」


 守は玩具のバケツいっぱいに入ったメダルをレジの方に持って行った。


 お前ゲーセンのプロだよ、守。


 大神と守が別行動になり、俺は天音と少し休憩することにした。


 財布の中身を見てため息が出る。


 はあ......メダルゲームだけやるつもりだったのに、結局クレーンゲームとかいっぱい連れ回された。

 これだからゲーセンはコスパが悪いんだよなあ......。


 ふと天音の方を見ると、さっき何百円も費やして獲ったイルカのぬいぐるみを抱きしめていた。


「獲れて良かったな」

「はい!藤宮君達がコツを教えてくれたおかげです」


 守が代わりにやればもっと少額で獲れただろうが、本人が獲るのが一番だろうな。


 沈黙が流れる。

 気まずくなり、スマホを手に取ってゲームを起動するが全部スタミナ切れ。

 やることがない。


「深瀬さんと大神さん、良い方達ですね」

「天音さんが良い人だから、あいつらも親切にしてくれるんじゃねぇのか。まあ大神はどんな奴にも優しいけど」


 再び沈黙が流れる。


 暇だな。この時間何かに有効活用できないかな。


「......藤宮君」

「ん?」

「楽しいですね......!」


 天音は嬉しそうにイルカのぬいぐるみに顔をうずめた。


 まあこのままでいっか。


 そんな天音を見るとさっきまでの杞憂はすぐにどこかへ消え去った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 最後にマ〇ドナルドに来た。


 大神がポテトを咥えながら天音を見つめる。


「それにしても意外だったな~」

「なにが?」

「だって天音さんがこんなに一緒に遊んでくれると思ってなかったから」

「確かにそうだよなぁ!去年めちゃめちゃ人気だと思ったら途中から誰とも遊ぼうとしなくて、どこかよそよそしいというか......」


 それ本人の前で言ってもいいのか、守。


 天音の顔が少し曇った。


 守もさすがにプライベートに踏み込みすぎたと思ったのか慌てて取り繕う。


「ま、まあでも――」

「そうですね、おっしゃる通りです」


 はぐらかしたりしないのか......

 でも理由までは言いたくなさそうな気がする。

 俺もその件については全く気にならないと言えば嘘になるけど、本人が聞かれたくなさそうなことをわざわざ聞いてもなんのメリットにもならないからな。


 大神も守もさすがにそれ以上は踏み込むことはなく、気まずい空気が流れた。


............。


 何とか話題を変えようと守が俺をいじる。


「ってか守にこんな友達が出来てるとは、親友である俺ですら知らなかったな!」


 途端に天音の表情が明るくなる。


 あれ、なんで天音さんが嬉しそうなんだ?


「だからただの知り合いだって」

「え、友達じゃなかったの?」


 それを聞くと一転して天音の表情が暗くなる。


 もしかして......


「まあでも今日一緒に遊んだからな。さすがにもう......」


 恐る恐る天音の顔を見ると、天音はたちまち笑みを浮かべる。


「......はい!もう友達です......!」


 そう返す天音の目にはうっすら涙が浮かんでいた。


「私も深瀬君も友達だよ‼」

「はい!もちろんです‼」


 今日、俺たちに一人友達が増えた。

【予告】第五話 勧誘される藤宮君

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