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効率厨は理屈を捨てたい。  作者: 東雲ナエル
2/7

第二話 隣を歩く天音さん

 新しい一年が始まって三日目。


「行ってきまーす」


 朝の日差しに眩しさを感じながら家を出る。


 いつも登下校は一人だ。

 なぜなら出来るだけ登下校の時間を短くしたいからだ。

 宿題もゲームもできない時間など出来るだけ短いに限る。


「......ん?」


数メートル先に見覚えのある後姿が見えた。天音結衣だ。


歩くスピード的に追いつくか......。

無視無視。


もちろん、話しかけず横を通り過ぎる。


「あ......」


何か反応された気がするが、気づいてないふりをして遠ざかる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「あれ......」


いつもは青信号なはずの交差点が赤信号になっている。


「あ、そうか。あの後早歩きしたからか」


効率を追い求める者は常日頃から信号が変わるタイミングを暗記している。

勿論、俺もその一人である。

だが、今日はアクシデントがあったからタイミングがずれた。


はぁ、この信号長いんだよなあ......まあ少し疲れたし待つか。

......待つ?まさか......


後ろから足音が近づいてきた。


そしてその音の正体が、一メートル隣に並ぶ。


「藤宮君、おはようございます!」


げっ......。やっぱ天音結衣だ。


「おはよう、天音さん」


とりあえず挨拶を返す。


............。


二人の間に沈黙が流れる。


気まずい......。まあこれもあと少し。


信号が青に変わる。

何事もなかったように足早に渡る。


バタバタッ!


天音が駆け足で隣についてきた。


「......え?」


思わず驚きを声に出してしまった。

天音は不思議な顔でこちらを見つめる。


いやいやいや意味わからんが!?どういうつもり?


困惑の表情を浮かべても、天音は変わらず「......ん?」と言わんばかりに見つめてくる。


......正直にいうか。


「あの、気まずいからお互い一人で登校しません?」


すると、何故か満面の笑みで嬉しそうな天音さん。


「はーい!」


天音さんも気まずかったのかな......。


ますます天音結衣という人間の思考がわからなくなった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


お昼休み。

飯を食ってる途中に天音にしゃべりかけられても嫌なので、ちょうど一番遠い席の守の隣で食べる。


「おい、ばっかり食べやめろよ~」

「お前は俺のおかんかよ」


守は昔から俺の悪癖を注意してくる。慣れているので悪い気はしない。

ちなみにばっかり食べをするのはその方が効率的な”気がする”からだ。


後ろからクラスメイトの話し声が聞こえてくる。


「結局さ、このクラスで一番”良い女”って誰よ」

「まあ立華とかじゃね?」


立華菜月たちばななつき

黒のロングに澄んだ表情で周りに笑顔を振りまき、

それでもって男に媚びることなく、女子から憧れの的として絶大な人気を誇る。

周りの人間は彼女を『才色兼備』『文武両道』『容姿端麗』様々な四字熟語で形容する。


「いや、でもあいつ気強そうじゃね?俺はもっと全てを受け入れてくれるような聖母の如く......」

「じゃあ......大神?」

「確かに俺ら陰キャにも話しかけてくれるくらい優しいけど、顔がなー」

「正直可愛いとは言い難いよなぁ。眼鏡かけてるし」


守が箸を止める。

「理。なんか俺気分悪いわ」

「勝手に言わせとけ」


他人が陰で言っていることにいちいち反応しても埒が明かない。

守もそれをわかっているからか、また食事を再開する。


「......やっぱり、天音さんだよな」

「うわー、それ言っちゃう?」


天音結衣は〇ォルデモートみたいに”名前を言ってはいけないあの人”になってるのか?


「だって一番可愛いし清楚そうだし庇護欲そそられる見た目じゃんか」

「でもあの人、もう半年くらい誰ともしゃべってないんじゃないかってくらいずっとぼっちだろ。本当はサイコパスなんじゃないかって噂も出てるくらいに不思議ちゃんなの、怖いだろ」


そうか。あいつ誰とも喋ってな......


遠くの自分の席で笑顔でパンを頬張る天音結衣を見る。


でも俺とは喋ろうとしてたんだよな......。

【予告】第三話 知り合いの天音さん

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