第一話 隣の席の天音さん
初めての投稿になります。頑張って執筆続けますので暖かい目で読んでくれると幸いです。
今日から高校二年。
去年は面倒事もなく、穏やかに高校生活を送れたんだ。
今年も平和に......安全に......。
そう頭の中で反芻しながら、席に着く。
「うぉ~い~~」
「なんだよ」
朝からダルがらみしてきたのは幼馴染の深瀬守だ。
「はあ......そっか、お前がいたんだった」
「なんだよ~俺とお前の仲じゃんか!」
「朝イチにお前としゃべると疲れるんだよ」
「え~嬉しいくせに~。お前の数少ない友人の一人なんだぞ?」
「うるせぇ」
「あ、今日から復刻されたダンジョン『迅雷龍の巣窟』、協力プレイしようぜ」
守とやっているRPGゲーム《Dragon's Quest》のことだ。昔から惰性で続けている。
ちなみに『迅雷龍の巣窟』は経験値効率が高い周回用ダンジョンだ。
「はいよ」
フレンド欄から守を招待し、ダンジョンを選択する。
「おっけー......ん?なんだよこのつまんねえパーティー構成」
「魔力消費も少なくてコスパ良いんだよ」
「せっかく協力プレイなんだから楽しめよな~」
プレイにゲーム音は基本的に意味がないからいつも無音だ。
黙々と攻撃指示をする。
「そういえばさ、お前彼女つくんねぇの?」
「生活の効率が落ちる」
「ふーん」
「ってか恋人って本来作るもんじゃねえだろ」
「良いこと言うじゃん、じゃあ好きな人とかは?」
いない。そもそも異性の友達がほとんどいない。
「大神とかは?」
「え、私がどうかした?」
背後から話しかけてきたのは、去年ゲーム繋がりで仲良くなった唯一の女友達 大神心美だ。
「お、おはよ......いや、あの......あ、協力プレイだれか誘おうかな~って、あはは......」
守、さすがの頭の回転。
「わかった!職員室行かなきゃいけないからまた後でね!藤宮君もおはよ!」
「......おはよ」
笑顔で教室から去っていく。
「......優しいよな大神」
「お前彼女いんだろ」
「ちげぇよ馬鹿、お前の反応伺ったんだよ」
「あいつは......いや、なんでもない」
「ふーん、まあお前も運命の人とやらが見つかればいいな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
守との駄弁りも終わり、一人でスマホをいじる。
そういえば、席変わったんだっけ。隣誰が座るんだろ。
「ん!ここだ!」
隣の席に一人の女子が座ってきた。
天音結衣。もちろん交流はない。
入学当初、可愛すぎると持て囃され人だかりができるほど人気だったのにいつの日からか誰も寄り付かなく......というか、彼女自身が周りを避けているような……。
とにかく不思議な人間だ。
まあ、俺とは関わりのない世界だろうから見ないでおこう。
――1限――
たまにちらちら見られている気がする。
......いや、気のせいだろう。関わらない関わらない......。
――2限――
やっぱり、見られてる......。
なんなんだほんとに。
――3限――
おいおいもうちらちらどころか、ガン見してきてるぞ!?
絶対に反応しないぞ......ずっと無視していればあっちも興味を無くすはず......。
――4限――
じ~~~~~~~~~~~~~っ。
イライライライライラ。
――昼休憩――
「あの、なんすか......?」
お弁当箱を開けようとしている天音に話しかける。
さすがに我慢ならなかった。こういうのは早めに対処しておいた方が結果的に効率がいい。
「......え?」
天音は驚いたようすで、こちらを見つめる。
「いや、朝から授業中ずっと視線感じてたんでなにか用事でもあるのかと......」
「え……うそ……」
無意識!?そんな自然と目線が行くほど個性的な見た目してないと思うけどな......。
「い、いや勘違いかもしれないです。すみません」
気まずくなったので、守の席の隣で食べようと席を立とうとする。
「あ、あの......!」
「え......はい」
天音はなにか言いたそうにごくりと唾を飲む。
「......天音結衣です。1年間よろしくおねがいします」
「あ、俺は藤宮理。こちらこそよろしく......」
自己紹介......?それだけ?
疑問に思ったが、天音が満足そうにお弁当を食べ始めた。
まあどうでもいいか。
【予告】第二話 隣を歩く天音さん