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第17話 駅馬車の増発

 駅馬車を待たされたという話を家に帰ってから両親にしもした。

 それで、私は閃いた。


「そうだ。馬車の横って空いてるでしょう」

「いや、木の板があるよ、エル姉様」

「その木の板には何も書いてないよね」

「そうですね?」

「そこに広告を入れるの」

「広告? へぇええ」


 妹ちゃんはよくわかってないながらも感心してくれた。


 バレル商会の商会長を呼びつける。

 そういう関係なので、これは問題ない。

 貴族と市民では身分が違うんだ。

 私たちがわざわざ行くと、そっちで騒ぎになっても困る。

 こればかりはしかたがない。


「バーグマン様、どのような御用で? 本日はシエル様ですか、それともエルダ様で?」

「私です」


 私が名乗りでる。ちなみにシエルはお母様ね。


「エルダ様ですか。なんなりとお申し付けください」

「実はね駅馬車を利用したのだけど、数が少なくて」

「馬車は値段が張りますからね。投資をするにもあまり」

「そうなのですか?」

「はい。費用が掛かるため、敬遠されているようです」

「そこで馬車の横に広告を入れて走るのはどうかなと」

「広告ですか? うむ、うむむむ」


 バレル会長の目が鋭く光る。

 今、そろばんを頭の中ではじいているのだ。

 この世界にそろばんはないけど。

 似たような計算のおもちゃならある。

 ただあまり実用だと思われてなくて子供が足し算をするときに遊ぶらしい。

 うちにも一台あって、私とカメルが遊んだ。

 カメルももう卒業して、一桁の足し算は暗記できる。

 あれを何桁も並べれば普通に計算機になるのに、なぜかそういう応用はない。


 広告って紙が高価だし日刊新聞もない。

 週報みたいなのがあるだけみたい。

 それであんまり発達してないんだよね。


 看板を設置するのはあるんだけど、普通は自分の店の前だけなんだ。


「いいですね。やってみましょう」

「本当ですか?」

「いや、ほかならぬエルダ様ですし。オイルでは儲かっていますからね」

「えへへ」


 実は投資をしてオイルの蒸留器を商会のほうにも設置したのだ。

 これで生産量が倍増して今、うはうはの、いけいけどんどんなのだ。

 それで私腹を肥やして、最近おじさんお腹が出てきたような。


「本当、お腹にお肉付けちゃって」

「分かりますかな? こりゃあダイエットしないといけませんな、あはは」


 こういう冗談もできる。

 さて手を打ったので、あとは学校に素知らぬ顔をして通うだけだ。


 それから読み書き計算と簡単な物から勉強に入る。

 もちろん初級は簡単だった。

 別に普段、読んだりしているから全然平気。

 計算も普通にできる。


 歴史は少し書斎の本棚にまとまっている本があったので、それ一冊のおかげで助かっている。

 こうやってまとまっている情報って少ないので大変重宝した。


「エルダ様は、その、勉強できるんだな」

「まあ、一応?」

「くぅっ」


 あのおぼっちゃまのゲレン君、勉強嫌いみたいでね。

 しかし最初の簡単なテストで私が勉強が何でもできると知ってから、なんか火が付いたみたいで今頑張っている。

 私は国語と数学百点。社会九十点。まあ、わからなくもない。

 負けず嫌いなんだろう。

 まあ別につっかかってくるわけではないので、いいんだ。

 私のこと男の子同士のライバルだとでも思っているみたいだけど。

 令嬢に対する態度ではないので周りはヒヤヒヤして見てるんだぞ。

 私の知ったことではないので気にしていないけど。

 勉強にお熱で周りは見えていないところはまだまだ子供だ。


 そんなこんなでひと月もたったころ。


「なんか最近、バレル商会の馬車、走ってるよな」

「あれ乗合馬車だろ」

「そうなのか、へぇ」


 クラスでも話題になったので聞き耳を立てる。

 こんなところまで声が聞こえるということは、かなりの宣伝効果のはずだ。

 にししと悪い笑顔を浮かべていると、メルシーちゃんの鋭い視線が飛んでくる。


「お嬢様」

「にゃああ」

「誤魔化してもダメですよ」

「だってぇ、気になるんだもん」

「盗み聞きなんてはしたないですよ」

「はーい」


 ペロッと舌を出すと「しょうがないですね」と返ってきた。

 長い付き合いなので気楽なものだけど、相変わらずリーチェの指導の行き届いていることで。

 お嬢様らしく、大人しくしております。


 とにかく最近乗合馬車が倍になって便利だねという声が聞こえるのはいいことだと思う。

 悪いことをしているわけじゃないので、どうどうと胸を張ればいいんだ。

 にゃはは。



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