幼馴染みと勉強会③
麗夏の家に着き、タオルを取ってくると言ってた麗夏は、シャワーを浴びてきなさいとおばさんに言われ、洗面所へと押し込まれる形で連れてかれた。
「さてと……ほら、海斗君もいつまでも玄関に居ないで、リビングへいらっしゃい」
そう言いながら、おばさんは手招きをしながら呼んできた。
言われるがままリビングへ行き、椅子へと座った。
今までも何度かは来たことあったけど、正直まだ落ち着かない部分もあるし、なにより……麗夏のいない空間でおばさんと2人になるとは想定外だった……そもそも親がいるとか思ってなかったし! いや……変な意味では無いんだけど……色々複雑な関係だし、それを考えたら会いづらいって思うわけで……
「麗夏が居ないから緊張してるのかしら? それとも……変な事でも想像してたのかしら?」
おばさんの声に肩をビグッとなった。 ぎこちない笑顔になりながら、ギギギッと錆びた機械みたいに顔だけおばさんの方へ向けた。
そんな俺の様子を見て、ふふっと笑いながら麦茶の入ったグラスを置いて向かい側の椅子に座った。
まるで俺と麗夏の事を揶揄うみたいに、いつもそんな事を聞いてくるのだ。
「思春期だし、好きな子だから仕方ないわよねぇ~」
「えっ……と……そんな事は……」
「あら? 麗夏はそんなに魅力無いかしら?」
「い、いえ! そんな事ないですから! すごく可愛いと思ってます!」
「ふふっ、なら良かった。 あの子もやっと初恋の人と付き合えて、凄く幸せそうだからつい嬉しくてね。 あの子と付き合ってくれて、本当にありがとう」
そう言って、微笑みながら優しい眼差しでお礼を言ってきた。
その言葉と微笑みに、俺の心にズキッと痛みを覚えた……
違う……麗夏一人とって訳でも、そもそもちゃんと付き合ってると今の俺達は言えるのだろうか……きっとおばさんに全てを話したらショックを受けるんだろうな……
「あっ! あの子の着替え準備しとかないと。 海斗君少し待っててね」
そう言っておばさんは、パタパタとスリッパを鳴らしリビングを出ていった。
「やっぱ……おばさんにもちゃんと伝えといた方がいいよな……」
そう……俺の親と花音の親は全てを知っている。
花音の親は『君達にとって悔いがないようにしなさい』と、言ってくれたが……俺の母だけは、認めてくれてない……
だから、麗夏は俺の家に来た事が無いし、麗夏も俺の母の事は知っている……『仕方ないよ』って言いながらも、辛そうな顔をした麗夏を俺は忘れられなかった……
それに、話すとしても麗夏じゃなくて、俺がちゃんと話すべきだとも思ってた。
「1人にさせてごめんね海斗君。 あの子もう少しで出てくると思うから」
「あの! おばさんに言わないといけないことがあるんです!」
リビングに戻ってきたおばさんに、俺は覚悟を決め話しかけた。




