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タマになった私

タマと兄嫁と

作者: 伊勢


あらすじにあった通り、「タマになった私」シリーズの続編です。


おまたせしました、兄嫁のお話です。

短いですが、楽しんでいただけると幸いです。


玉藻の口調を少し変えました。



「こ、こんにちわ」


ある日、兄が女の子を連れてきた。

いや正確には美幼女である。


頭の上では大きなミミがぴくぴくと動き大きなしっぽがフサフサと揺れている。兄の後ろに隠れるように立つその子は恐らく狐の妖なのだろう。


妖の世界であるここ、隠り世では珍しく洋服を着ている彼女はとっても可愛らしい。


「わぁ、可愛い!お兄ちゃんこの子どうしたの?」


「あー…いや、その」


「こんにちは!お名前はなんて言うの?」


「おい、ちょ、俺の話を…」


「た、玉藻です」


「え、本当?私はタマって言うんだよー。名前似てるね」


「え…ほ、本当ですか?」


「本当本当」


「え、えー…」


美幼女…玉藻ちゃんは心底ありえないと言ったふうに目を見開いて驚いていた。

大抵の人は私の名前を聞いて今の彼女と同じような反応をするので慣れてしまった。例に漏れず、彼女も私の猫のような名前に大分驚いているようだった。


でも、玉藻とタマってあんまり変わらなく無い?

そんなに驚く?というか呆れたよう顔になるかなぁ。


「あ!そうだ…紹介するね!夫の蘇芳と息子の子タマ君です!」


「え…?こ、子タマ??」


「そ!よろしくね~」


「は、はぁ」


「…どうも、夫の蘇芳です。ほら、挨拶しろ」


実はずっと私の横にいた蘇芳の腕にはまだ小さな私の愛し子が抱かれている。まだ3歳だが、年齢に似合わずとても賢い子なのだ!そして超絶可愛い!


…親バカと言うならば言えば良いよ!

自他ともに認める子煩悩な親バカとは私の事だが何か?


「…こんにちわ、子タマこと(よう)です。よろしく」


「あ、子タマでは無いのね…」


「子タマは…愛称かな」


「そ、そうなんだ」


「…俺が全力で否定しなかったら確実に子タマって名前になってたけどな」


「…」


そうなのだ!名付けの時兄に言ったらそれだけはやめろと言われてしまったのだ。

散々議論した結果、子タマは瑤という名前になった。


子タマもいい名前だと思うのになぁ。蘇芳もそれがいいなって言ってたしぃ。何より凄く分かりやすいじゃない?

まぁ、実はこの漢字“たま”とも読むんだけどね!


「寧ろ何故お前はその名前でいいと思った。妹よ、俺は心底不思議で堪らないよ」


「えー?だって、ねぇ?」


「タマの子供だ。分かりやすくていいのにな?」


「ほら、蘇芳もこう言ってるし」


「お前らはそろそろ自分たちのネーミングセンスがやべぇって事に気づいてくれよ!!」


「「そう?」」


「はぁー…」


兄は何故か心底疲れた顔をして項垂れてしまった。

どした?おつかれですか?


「あ、あの!た、タマ?さん」


「はーい?」


「私、その…」


「あー、玉藻。俺から言うから」


「は、はい」


兄はモジモジと照れている様子の玉藻ちゃんの背中を軽く押して前に出すと軽く頬を染めて照れながら衝撃の事実を暴露した。


「タマ…俺、結婚したんだ。と言ってもまだ籍入れただけだけどな」


「え?!」


「その、嫁の玉藻だ」


「タマさん!あ、改めてよろしくお願いします!」


…兄は今、なんといったのだろうか?

結婚、そういったのだろうか?あの、兄が?


少女漫画で言う、ヒーローの親友でヒロインに片思いしているが当の本人には相談役としてしか相手にされず、頼れるし優しくて良い奴だけれど恋愛対象として見られることは無いと言う不憫キャラポジションの兄が?結婚?

それはおめでたい。とても。だが…


「…兄よ、いつの間にロリコンに」


「ちげぇわ!!」


「じゃあどういう事?」


「いや、その…嫁だ」


「やっぱりロリコ…」


「まてまてまて話を聞けって!てかそもそもお前、妖が見た目通りの年齢じゃないってことわかってんだろ!それに、玉藻は狐だぞ?」


「はっ!」


「わかってくれたかっ!」


「これが噂の合法ロリ…」


「ちげぇ…とは言いきれないのが悔しい」


「お兄ちゃんがロリコンだったなんて…はっ!可愛いからってうちの瑤君に手出したら兄とはいえ殺すからね」


「出すわけねぇだろ!」


その時、服の袖をチョイチョイと引かれ視線を向けるとそこには子タマこと我が愛しの息子、瑤君がいた。


「タマちゃん、ロリコンって?」


無邪気な子供の質問になんて言うべきか…。

そのままの意味で伝えるのも、なんだか気が引ける。

そもそもまだ3歳の子に伝えるべき言葉ではない気がするが、ここでなんでもないよと言ってもこの子は絶対に納得しないだろう。

仕方ないので頑張ってオブラート包んで伝えるしかない…


「瑤君…ロリコンはね変態、いや危ない人って事だよ」


「叔父さん、危ない人だったの?」


「そうみたい…タマちゃんショックー」


「タマちゃんっ!瑤君が守ってあげるね!」


「瑤君っ!」


健気な息子のその様子に思わず私はヒシと抱きしめた。


はぁぁぁ!うちの子可愛い!超可愛い!!

でもごめんね!寧ろ守られるのは瑤君の方かなっ。


「そもそも瑤は男だろ!それに玉藻も!なんでその姿なんだよ!いつもは違う姿だろっ!」


「ご、ごめんね。お兄ちゃん…あっ」


玉藻ちゃんは慌てて自分の口を手で押え、兄は石のようにピシッと固まってしまった。

私も、玉藻ちゃんの今の発言に大いに驚いていた。


「“お兄ちゃん”…?え、自分で嫁って言っておきながら?ロリコン否定しておきながら??そう呼ばせてんの?」


「んなわけねぇだろ!」


「玉藻ちゃん、そうなの?」


「え?…えと、は、はい!いつもは名前でした!」


玉藻ちゃんは一瞬キョトンとした後に慌てて否定してきたが…その視線はオロオロと宙をさまよっている。

全身で嘘をついていると言っているようなものだった。


ジトーっと兄を見つめれば、兄は兄で何か慌てている。


「おいぃぃ!玉藻ぉ!」


「ひぇ、す、すいません!」


その瞬間、ボワンと音を立てて玉藻ちゃんは煙に包まれた。そこから姿を現したのは美幼女…ではなく美少女の玉藻ちゃんだった。


「いや、結局ロリじゃない」


確かに大きくなったけど…せいぜい14.5歳の姿。

そして体型的にはあまり変化はなかった。


「くっ…、せめてフェミニストと呼べ」


「おい変態」


「やめろぉっ」


兄は顔を両手でおおって涙声だ。

正直とても面白…ゲフンゲフン。


「タマさん!お兄さんは変態じゃありませんっ!とっても優しくていい人なんですよっ!」


「それは勿論知ってるよ…でも、あれは完全に変態の言い訳だったし」


「そ、それは…そうかもしれませんが」


「玉藻!負けるな!そこはちゃんと否定してくれないと俺が色んな意味で死ぬ」


「「…」」


「あの、そこは何か言ってください…」


遂に涙目でプルプルと震え出した兄を見て私と玉藻ちゃんは思わず見つめあった。

玉藻ちゃんは今にも吹き出しそうな顔で肩がかすかに震えている。きっと私も今同じ顔をしているのだろう。


見かねた蘇芳が苦笑を漏らしポンっと私の肩を叩いた。


「タマも玉藻殿もそろそろからかうのはそろそろやめてやれ。お義兄さん本当に泣きそうだぞ?」


「「えー?」」


「お、お前ら!今までのわざとか?!」


「「だって面白いんだもーん」」


玉藻ちゃんと私は、ねー?と言い合う。

すると兄は意味がわからないという顔をしていた。


「なんでそんな息ピッタリなんだよ?!お前ら初対面なんだよなぁ?!」


「いや?」


「違うぞ?」


「え」


私達二人があっさりと否定すれば兄は、又もやピシッと石のように固まってしまった。


「玉藻ちゃんはだって、蘇芳と同じ隠り世の一端を担う八柱の1人でその中でも古参の九尾の玉藻様だもの。蘇芳の仕事で何度もあったことあるしー」


「タマちゃん、玉藻様なんて呼ぶでない」


「ごめんごめん、でもまさか玉藻ちゃんがうちのお兄ちゃんと結婚するなんて…本当にアレでいいの?」


「アレがいいんじゃ♡」


「そっか、ならいいか。兄をよろしくお願いします」


「無論!大事にするぞい」


玉藻ちゃんは先程までの幼い子供じみた話し方ではなく本来の表情に話し方に変わっている。

最初、兄の後ろに隠れる彼女を見た時は本当に驚いた。

何となく彼女の意図を組んで話を合わせてみたのだが…思った以上に楽しかった。


因みに、勿論蘇芳も瑤君も玉藻ちゃんのことは分かっていたが2人とも黙って傍観してくれていた。

蘇芳はともかく、やはり私の息子は賢いね!


「お前ら…俺で遊んで楽しいかよっ」


「「うんっ!」」


悔しそうな顔の兄に私と玉藻ちゃんはしっかりと満面の笑みで肯定すれば遂に崩れ落ちてorzと項垂れる兄の完成である。


蘇芳と瑤君は兄を慰めるように肩を両方からポンっと叩くものだからさらに面白い。

私と玉藻ちゃんは2人して遂には声を上げて笑ってしまった。


「…はぁぁぁぁぁ」


その場には兄の重くながーいため息と私達の笑い声が響いていた。






「タマちゃん、それじゃあの。また来るからの~」


「うん!待ってるね」


あれから共に夕飯を取り遅くまで玉藻ちゃんと兄の馴初めや私の家族の惚気や近況報告など沢山話をした後、玉藻ちゃんは未だいじけている兄を連れて帰って行った。


因みに瑤君はそうそうに寝てしまっている。


「あー、楽しかった!」


「タマが楽しそうでよかった」


「うん!それにしても…ふふ、昔から思ってたけどお兄ちゃんはやっぱりお嫁さんに尻に敷かれるタイプだったね!まさか、その相手が玉藻ちゃんだったなんて…わかんないものだね」


「そうだな、さぁ今日はもう遅い。寝るぞ」


「うん」



※※



それから、兄と玉藻ちゃんは両親に挨拶に行き(幼女姿で行ったらしい笑)一悶着あったものの、その1年後には結婚式があり2人はとても幸せそうだ。

時折、うちに遊びに来る2人を私は玉藻ちゃんと共に兄をからかって遊んだりしている。


来年には子供も生まれるそうだ。

実は私も、2人目が生まれる予定だったりする。

同い年の従兄弟ができるね、と玉藻ちゃんと2人で話し合っている。





「ふふ、お兄ちゃん幸せそうだね」


「そうだな…タマも、幸せか?」


「うん!蘇芳に瑤君にお兄ちゃんも玉藻ちゃんも皆幸せそうで…凄く嬉しいし幸せだよ」


「そうか。タマや瑤…それに、この子もいて俺も幸せだよ」


蘇芳は愛おしそうに私の腹部にそっと触れた。

そこに、まだ小さな子供のぷくぷくとした可愛らしい手も加わった。


「そうだね、早く会いたいね」


「僕も!早く会いたいなぁ」


「そうだね、瑤君もお兄ちゃんだしね」


「うん!」



大好きな家族に囲まれて、本当に幸せだと思った。










タマ「次こそ子タマかな?」


兄「いや、だからそれやめろって…」


玉藻「じゃあうちの子が子タマかなぁ?」


兄「それは無い!絶対にないからな!」


タマ・玉藻「「えー?」」


兄「えーじゃないっ!」


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