02 秋ナスは嫁に食わすな
二月の上旬
小さな農園佐伯ファームに彼らの王国はある。
ナァス、ナァスとナス達の喋る声が聞こえる。
良く耳を傾けないとと聞こえない小さな声で、今日も彼らは愉快にお喋りを始める──
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「ねえねえ、秋茄子は嫁に食わすなってことわざあるよね」
「それって嫁には秋茄子は勿体無いから食わせるなって意味でしょ」
「ひ、ひどい!嫁さんに僕たちを食べさせろよ」
「秋の茄子は美味しいんだぞ」
「今は秋じゃないんだぞ!!」
「......(じゃあ秋茄子の話始めんなよ)」
「ガンの抑制にもなるんだぞ」
「嫁さんがガンになったらガーンってなっちゃうだろ」
「......」
「......つまんないこと言うなーァス」
「最後が≪な≫だからって語尾に≪ァス≫付けるなーァス」
「お前もな!ーァス」
「まあ、ナスは皆、最後に≪な≫が付くと≪ナァス≫って言いたくなっちゃうよなーァス」
「ナァァァァァァァァァァァアアアアス!!」
「「「「お前は黙ってろ!」」」」
「嫁さんに僕たち食べてもらいたいなあ」
「よくここに来るハクビシンにどっかの嫁さんの家にでも運んで貰おうかなあ」
「あいつは届ける前に俺らのこと食い散らかすぞ......それに友達じゃなくて天敵だよ」
「まだ僕ら種だし、実にも成ってないから食べれないけどね」
「え、じゃあ、どうすれば......」
「出荷まで待つんだ!」
「僕たちは半年ちょっとで種から実まで成熟するからな」
「秋茄子は嫁に食わすな、ってもう一つ意味があって
体を冷やすから良くないって言うまともな意見だよ」
「じゃあいつでも良いから美味しく食べて貰えるように頑張って成長するか」
「それなァス」
「それなーァス」
「ナァス」
......今日もナス王国は平和だ。
ナスはクセの少ない食べ物ですが、
会話口調はクセが強いです。ナァス
補足ですがナスは雌しべと雄しべの両方が花の中に一緒にある両性花です。なので本作品では男口調も女口調もいます。
トピック
・秋ナスが美味しいがナスの旬は夏
・半年ちょっとで成熟
・ハクビシンが天敵