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明日の聖女  作者: 丁太郎
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終わりなき戦い

「おかえり」


 そう私に話し掛けるのは私の同志。

 姿こそ少年に見えるけど、長い付き合いの様な気がする。


「只今戻りました。えっと名前は何でした?」


「いつもの事だけど、傷つくね」


「ごめんなさい」


「これで何回目かなぁ」


「……そんなに繰り返している?」


「まーね。その内思い出すでしょ。僕のことはネルとでも呼んでよ。今回もよろしくルアラ」


「ええ、よろしくネル」


「とりあえず、町を目指そうよ」


「そうね、町の場所は教えて貰ったわ」


 私は契約も結んだ相手から情報を引き出せる。

 だから、この世界の事が多少は判った。

 

 やはりこの世界も神や魔に毒されている。

 白き聖女の名において浄化しなければならない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー


 私達は町に着いた。

 中々な大きな町だった。

 一見、活気のある町。

 でも、人々の顔はどこか暗い。

 

 原因は直ぐに判った。

 中央にある赤い神殿。

 ここは神への信仰を強要された町。

 あの神殿には『赤き火の神』が祀られているのだろう。

 

 今はダメだ。

 今の私では太刀打ちできない。

 今の私は同志1人を世界に繋ぐのが精一杯。

 だから今は力を蓄えないとならない。


「変装した方がいいわね」


「おっけー。任せて」


 ネルが何かを唱えると、私達の姿がこの世界の者の姿に変わった。

 

「懐かしい感じがするわ」


「結局これが一番自然なんでこの姿になっちゃうんだよ」


 私達は町娘とその弟風に姿を変えた。

 ネルは生前は高名な魔道士だった。

 私達はの姿は幻視ではなく、実際に変わっている。

 だから余程の事が無い限りは見破られる事は無いはずだ。


 改めて町を歩くと赤い衣装の者達がいた。

 おそらくは神官なのだろう。

 驚くことにその神官達はダークエルフだった。

 エルフは森や水や風を信奉し、ダークエルフは火や闇を信奉するのだったか。

 火の神に属する者で間違いない。 

 私は目を合わせないように観察する。

 彼らは治安維持も担っていると思われた。

 町の皆が頭を下げている。

 私達も頭を下げないと目をつけられそうなので、形だけは頭を下げてやり過ごした。


 この町の開放はすぐには難しそうだ。

 それが結論だった。

 理由は町の住人が強き者に支配されることをよしとしているから。

 この町は赤き火の神の支配地。

 神の支配領域を把握できてはいない。

 しかし、そう遠くない森の近くで『青き水の神』の使いに遭遇した。

 であれば、ここは赤き火の神の領域では端の方だろう。

 

 そこまでわかればこの町に用はない。

 私達は直ぐに町を出た。


「もう町はいいの?」


「私達に食事は必要ない。衣類もネルがいれば困らないわ」


「ベッドで寝たいなぁ」


「お金が無いわ。だから無理ね」


「はぁ、だよね」


「とりあえず変装を解きましょうか」



 町を出てしばらく進んだ所で私達は変装を解いた。

 それを待ち構えていたのだろうか?

 空から赤く燃える鷲が私達の眼前に舞い降りた。

 

 シャラン

 

 「聖女の法 LV2 白球の暴食」


 即座に術を発動したが、私の術は燃えて消えた。


『好戦的だな……』


『ずいぶんと余裕ね』


『お前に私を倒す事は出来ない故な』


<私を知っている?>


『魂の従者よ、動くな』


 術を使用しようとしたネルを牽制してきた。


『何故勝ち目がないと判るのかしら?』


『簡単な話だ。お前はまだ全力を出せない。だろう?』


 どうやらこちらの状況は完全に把握されている様だった。

 さて、どうするか?

 白い戦士達では太刀打ち出来ないだろう。

 ネロにも荷が重い。

 他の同志達……いえ、今の私には複数呼ぶだけの力がない。

 ふう、これは手詰まりかもしれない。


『私をどうするつもり?殺すならもうやっているでしょう?』


『確かに可能だ。敵であるお前を殺さぬのは我が主の御言を伝えるため』


『何かしら?』


『心して聞け〝青き水の神に属する者を滅せよ!さすれば命を助けるだろう〟』


 赤き火の神は私にタダ働きさせたい様だ。

 私が敗れた所で自らに被害が在るわけでも無い。

 要は現在の均衡を崩せればいい。

 その為の使い捨ての道具というところか。


「ふ、ふふふ……」


『……』


「ふふふ、ふふ……あははははははははははははははははは。面白い。面白い冗談だわ!あーーーーはっはっはははははははははははははははははははははははははははははははははははは」


『不敬者が!!』


 思わず笑ってしまったが、だから思い出した。

 私に協力者がいた事を。


 シャラン!

 

 私は彼から貰った棒、『錫杖』、彼がそう呼んでいた棒で地面を突く。


『私はお前に確かに勝てない。今はまだね』


『最早、お前に明日は無いと知れ!』


 鳥の眼光が鋭くなった。


『言っておく。私は勝てないけど、私には明日はあるわ。私の目の前にいる鳥と違ってね』


『この高貴な俺を只の鳥だと!!!』


『さようなら、哀れな鳥』


『!!』


 漸く気づいた様だけど、もう何もかも遅い。

 赤き火の神の使いの鷲よ。

 私が錫杖を鳴らした時、お前はもう斬られていたのよ。

 私の隣にいつの間にか立っている彼によってね。


『き、きさま・・・異界の神と通じ・・・て』

 

 そこまで言い、鳥は縦に二つとなって死んだ。


「残念、不正解。彼は神ではない。それを超えた者よ」


「急な呼び出しだな」


 さて、協力者の彼のぼやきに対応しましょうか。

 私は彼に向き合う、黒髪黒目のその男と。

 驚いたことに1人では無く、その後ろに水色がかった銀髪の美しい女性を連れていた。


「約束でしょう?それで後ろのお方はどなたですか?」


「まあ、約束したな。彼女は俺の妻だ」


 無言で挨拶をする美女。


「ぷ、くくく。本当に貴方は毎回笑わせてくれるわね。予想外すぎるわ」


「やれやれ、酷いのと約束しちまったな」


「ごめんなさい。私はルアラ。この度の協力に感謝します」


「僕はネル。ルアラを助けてくれて有難う」


「よろしく、そうだな先ずは我々に名前をつけてくれ」


「それが貴方達のルールだったわね。」



ーーーーーーーーーーーーーーー


 私は聖女としてこの世界で神と魔を滅し、世界に調和をもたらす使命がある。

 この世界で人を自立させる為に。

 それをしないと世界から超越者が生まれないから…

 これまで幾つもの世界を矯正してきた。

 そして、これからもそうしていくのだろう。

 私の魂が朽ちるまで。


 完

読んで下さった方、ありがとうございました

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