【第三章】第二十九部分
宗春は『浪費モード!』と叫んだ。
こちらは黒い馬に乗っている。馬は興奮してヒヒーンと唸って立ち上がった。
「ワタクシも変身できましたわ。印籠もあって正統な将軍はワタクシしかおりませんわ。」
集まった下級武士は両者に倒され、武家伝奏や幕閣や吉宗の父親などの位階の高い武士たちは命大事と逃げ去った。
「これでふたりだけで真剣に愛撫できますわ。あら?ワタクシったらはしたない。言い直しますと、試合にダイブってことですわ。」
「そんなの、どっちでもいいわよ。刀のワビサビにしてくれるわ。」
「あら鼻腔をつんとくすぐる香りで風流ですこと。ではこちらも。」
宗春も刀を光らせて、火花を散らしながら鍔迫り合いする。
パワーでは宗春がやや優っており、吉宗は弾き飛ばされた。
「いたたた。コイツ、強いわね。ぐはっ。」
吉宗は内臓を痛めたのか、手からこぼれるだけの血を吐いた。
「あらあら、もうおしまいですの。ずいぶんと短小な聖剣、いや短命な政権でしたこと。」
「まだまだよ。負けてはいないわ。」
吉宗は再び刀を構えて宗春に向かうも、返り討ちに遭って畳に仰向けに倒された。天井を仰いで、息を切らしている吉宗。
「もはやこれまでですわね。では最後に、恥ずかしい格好にして差し上げますわ。すべてを晒して、身綺麗になって下さいな。」
宗春は刀を使って、吉宗の金ボタン付きのジャケットを剥ぎ取っていく。胸をはだけると、サラシに巻かれた緩やかな起伏が現れた。
「あらあら、征夷大将軍を名乗るには、ずいぶんとお寒い内容ですこと。世間に見せる価値がありませんわ。」
宗春は白いミニスカートの方に目を移した。スカートは少しめくれて、血色のよい太ももがチラリと覗いている。
「『本丸』の方も見るに値しないでしょうけど、一瞬でも将軍を名乗った罪を罰するために、すべてをさらけ出してもらいますわ、二度と悪ダクミができないように。」
宗春は刀を使って汚物を触るように、スカートの裾に切目を入れた。
「さあ、秘所という幕府を開きますわよ。」
宗春はスカートをビリビリと裂いた。
「ほらほら、見えてきましたわ。これは腰巻きですの?着物に下着は禁止ですのに。どこまでも下品ですこと。それにこの大きさ、まるで殿方のフンドシのような形状ですけど。あれ?この腰巻き、文字が書いてありますわ。これは名前でしょうか?『渡心御台』と書いてありますわ。」
「渡心御台⁉」
倒れていた吉宗はその言葉に反応し、体から光を放ってゆっくりと立ち上がった。




