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【第三章】第二十二部分

吉宗はゆっくりと顔を上げて、目の前にある手拭いを拾い上げた。

「こ、これはあの時の布切れ!?どうしてこんな所に。そう言えば貸したままだったわ。」

吉宗は手に取ってしばし眺めていたが、やがて、顔を手拭いにこすりつけるように、匂いを嗅いだ。

「ネコ将軍のイヤな臭いも混ざってるけど、紛れもなく、布切れ王子の体臭だわ。なんとも香しいわ。うっとり。」

吉宗は生徒会長室で、ひとり恍惚に浸った。手拭いに顔を押し付けたので、体液のシミが付いてしまった。

「この布切れは王子がアタシを助けてくれた時のもの。布切れ王子はアタシのことを本当に嫌ってるのかしら。あの時の春の日のような微笑み、教室での何気ない会話に現れる優しさ。それをアタシは全部否定しようとしてる。アタシにはまだ可能性が残ってるわ。恋にしても、将軍としても!」

 吉宗はシミ付きの手拭いをきつく握りしめて、立ち上がった。

「アタシ、進化生徒会の圧政をするわ。生徒会に反逆するというのは、一揆。でも百姓一揆ではなく、将軍が進化生徒会に行う下剋上よ!これぞ将軍の新たな姿だわ。そして進化生徒会を倒幕した暁には、恥じらいながら布切れ王子に『イイクニ作ろうカマトト幕府』宣言するわ!」

わかりにくい幕府創設を唱えながら、進化生徒会へ単身乗り込む吉宗。


「タノモウ!」

吉宗は、御簾の間の扉を壊さんばかりに開いた。引き戸なので、ドアが柱に激突して、割れたような音がした。

「何しに来たんですの?」

御簾の向こうから声を出した宗春。破れた扇子が手から離れて落ちた。

「世直し。『キョウフの改革』よ!」

「この期に及んで、恐怖政治の標榜とは、恐れ入ります。盗っ人猛々しいとはこのことですわ。」

「キョウフの改革とは、キョウフ政治を改革するという意味よ。バラまきしたあとで、一気に資金回収するとか、ひど過ぎるわ。」

「そこまでおっしゃるとは、自分の命の価値を倹約して大幅に下落させた、ということですわね。いい心がけに対して、豪華な晩餐会に招待して差し上げましょう。さあメイドの皆さん、おもてなしをしてくださいな。くれぐれも取り逃がすという粗相のないように。ホーホホホッ。」

「ちょっと、何なのよ、あんたたち。」

御簾の前に現れた三人。H前、綱吉、市香。順に赤、青、黄色のメイド服を着ている。スカートは膝上であり、明らかにコスプレ用のものである。


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