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【第三章】第二十一部分

「こんな厳しい圧政は見たことないわ。」

校内ではこんな声が出てきていたが、特進クラスの進化生徒会には、誰も抗うことができなかった。

吉宗にはそんな事態が耳に入っていたものの、何もできないでいた。H前、御台も同じであった。三人ともに生徒会室の机にこぶしを乗せて、腕を震わせるだけだった。

そんな中で、進化生徒会から校内放送が流された。

『ワタクシ尾張宗春から全校生徒の皆さんに軽いお知らせがあります。ワタクシはこのたび、天下を取りましたと公言します。しかし、実権のないレームダックとはいえ、征夷大将軍徳川吉宗が厳然と存在します。ついては、征夷大将軍よりも高い地位につくことにしましたわ。つまり人臣の最高位である《関白》宣言を高らかに行います。ホーホホホッ。』

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「えええっ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

校内放送を聞いていた生徒たちは騒然となったが、抵抗もそこまでだった。

生徒会長室で放送を聴いていた綱吉。スピーカーのネットの奥が見えるかのようにのぞき込んでいる。

「生徒を騙すようにして、結果的に最高権力を握るやり方。これでいいのかにゃ?」

綱吉は自問自答し、答えが見つからない。隣のスペースにいる吉宗の姿を見た。数十秒間視線を固定していたが、吉宗からの反応がなく、再び口を開いた。

「これでライバルが減ったにゃ。せいせいにゃ。なんか考え事し過ぎて汗かいたにゃ。あっ、ハンカチ忘れてたにゃ。」

綱吉はやおら引き出しを開き、机の奥にしまっていた手拭いを取り出した。それをわざとらしく、自分の顔の前で広げた。

「これで汗を拭くにゃ。借りたままだったけど、どうせこんな物、役に立たないにゃ。」

手拭いをゴミ箱に捨てようとした綱吉は手を止めた。

「要らない物をポイ捨てするのは、もったいないにゃ。こ、これは倹約とは違うにゃ。エ、エコにゃ。エコと倹約は犬猿の仲にゃ。倹約を村長したワケじゃないにゃ。将軍は吉宗はもはや村長にまで落ちぶれてしまったにゃ。」

綱吉はわずかに動揺でもしたのか、文字変換を誤作動させた。綱吉は隣のスペースにゆっくりと歩いていった。

吉宗は机に顔をつけて泣いていた。背中が脈打つように揺れているのが悲しい。

綱吉は吉宗のところまで少し震えながら近づいて、ノックするように机を叩いた。

吉宗は気づいて、わずかに顔を動かしたが、綱吉が見える角度には至らなかった。そんな吉宗に対して、眉をひそめて、綱吉は突き放すように語りかけた。

「これは前にツナがやられたことのリベンジにゃ。この手拭いで首を絞めるなりするがいいにゃ。」

踵を返して、綱吉は生徒会長室を出て行った。小声で何かを呟いていた。


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