【第三章】第二十部分
「やっぱりこうなったにゃ。じゃあ、ネコの手を貸すにゃ。刀を買うお金のない人は、特進クラス棟の一階に来るにゃ。融資する窓口を開設したにゃ。金利はわりと安くしておくにゃ。」
「救いの神だぁ!」「ヤマンバ教徒に救世主が現れると信じてたしぃ!」
溺れるヤマンバは藁を掴んで溺れてしまうものである。
借りたモノは返さないといけない。高金利で、返済する生徒の小遣い水準をはるかに超えていた。それでも借りるヤマンバ生徒は続出した。いい流れはすぐに切れてしまうが、悪い潮流は簡単には止まらないものである。
御簾の間では、宗春が満足そうに、怪気炎を上げていた。綱吉が買ってきた扇子はバンバン叩かれて、腰の湾曲した老婆のように破れている。
「ヤマンバ生徒たちの無限地獄の門が大きな口を開きましたわ。さあ、鬼たちを解放しますわ。鬼と言ってもファンタジーじゃありませんことよ。あくまで合法的なものですから。綱吉さん。計画通りに、進めていってくださいね。」
「わかったにゃ。貸したカネは回収して初めて生きるから。でもカネは生きて、代わりに生徒が死ぬにゃ。」
「人聞きの悪い言い方は止めて下さるかしら。資金回収は正当な権利ですのよ。」
綱吉はそのまま御簾の間を退出していった。わずかに振り返って、宗春に見えないように舌を出していた。
綱吉は借りているヤマンバたちへ一斉にスマホでメールを送信した。ボタンの押し方が強過ぎて、画面が凹んだままになった。
『期限までに借りたお金を返すにゃ。返せない生徒は休学処分にするにゃ。親から借りるなり、バイトするなりでもお金を用意するにゃ。バイトだと、フツーなバイトでは到底足りないような気もするけどにゃ。』
「えええっ!」「そんなの、聞いてないしぃ!」
ヤマンバたちは一斉に反発したものの、借りた方には義務だけがあることは変わりない。それから学校には黒い服にサングラスという怪しげで、しかも屈強そうな男女が姿を見せるようになった。言うまでもなく、借金取り立てのために、雇われた輩である。校内の空気はドス黒く染まっていった。
プロの取り立ては厳しく、休学どころか、不登校になる生徒が続出した。
生徒たちは分断されていたので、厳しい取り立てに助け舟を出す者はいなかった。少数派の倹約派は返済に苦しむヤマンバたちをあざ笑うだけだった。




