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【第三章】第十九部分

「もういったいどうなってるのよ!誰もいないんじゃ、何もできないじゃないの。・・・。つまり、アタシひとりじゃ、何にもできないってこと?」


御簾の間で、宗春は綱吉に笑顔をこれみよがしに振りまいていた。

「渡心市香さんを将軍吉宗と渡心御台さんがもめた時に、止めに入らなかったことは忠誠心の現れと評価しますわ。」

「笑顔の大安売りにゃ。ほとんど価値のない笑顔で、ホモ殺しどころか、かすり傷すらつけられないにゃ。」

「これで落ちないホモはいないんですが。まあ、何とでも言えばいいですわ。これで勝負の流れはこちら側に傾いたのは間違いないですから。これから反撃開始ですわ。」


校内放送が琴の優雅な音楽と共に流れてきた。

『全校生徒の皆さん、これまで将軍吉宗の倹約令に苦しんで来られたことでしょう。ワタクシからのプレゼントを活用された方々はまだしも、不幸にして倹約令の沼から脱出できない生徒さんたちのために、ワタクシは一肌、ふた肌脱ぐことはおろか、三四五を超えて全部脱いでもいい覚悟で、宣言しますわ。ここに『進化生徒会』を設立いたします!』

すでに分断されていた生徒たちには、動揺と歓迎の態勢で迎えられた。しかし、情勢は歓迎派が押してきていた。倹約と浪費。人間の本性に刺さるものは、浪費である。古代ギリシャでは禁欲主義のストア派と快楽追求のエピクロス派が争い、エピクロス派はやがて廃れた。しかし、飽食の時代と言われて久しい現代では欲望が勝っている。

さらに進化生徒会が商品券のバラまきを強化した結果、浪費に依存する生徒が大多数となった。つまり学校中、ヤマンバだらけとなってしまった。どこもかしこもヤマンバ。ヤマンバでない女子はイジメに遭い、ヤマンバを強制される始末となった。

「ヤマンバにあらねば、ヒトにあらず。」

ヤマンバが警察となり、ノーマル生徒を捕縛して、ヤマンバへの洗脳するということが常態化した。学校には秩序がなくなっていた。まさに地獄絵図である。

「そろそろ頃合いですわ。綱吉さん。次の行動に移して下さい。」

「ホントにやるのか?無秩序よりさらにカオスな状態になるにゃ!」

「構いませんわ。というよりそこが本丸への道しるべになるのですから。」


翌日、校内ではヤマンバ生徒たちが大騒ぎしていた。詐欺に遭った人間たちは得てして、知恵のないクレーマーになる。

「あれはいったい何?」「デマに違いないしぃ。」「そうそう、進化生徒会がそんなことするハズないしぃ。」

しかし、ヤマンバたちの薄い希望を粉々に打ち砕くお触れが出された。

『今日から商品券配布を停止いたします。これはウソでもなんでもありませんわ。ホーホホホッ。』

いかにも宗春らしい言葉であったので、お触れが真正なものであることはすぐに理解された。

ヤマンバたちの衝撃は大きかったが、そこまでに浪費に奔走していた生徒たちの流れは容易に止まるものではなかった。メイクという武装をしたい、でも先立つものがない。ヤマンバたちにフラストレーションが蓄積していった。


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