【第二章】第三部分
理事長室までの道のりで、H前は、ひたすら吉宗にちょっかいを出し続け、吉宗が軍配型リボンでガードするという攻防を繰り返しながら、奥の校舎の最上25階に昇った吉宗たち。
廊下を進んでいくと、右手の部屋に畳二枚分の観音開きドアが見えた。そこには大きな三ツ葉クローバーの家紋が描かれている。
扉の前に立つと、自動でドアが開いた。
正面には人影はなかったが、左奥に異様なオーラを感じた吉宗。
「着いたよ~。あそこにおわすのが、幕附高校グループの徳川理事長だよ~。モミモミ。」
「この期に及んでもセクハラか!」
再び軍配型リボンでガツンとやった吉宗。H前はのたうち回るが、見え見えのオーバーアクションである。
「ほほう、思ってた通り、元気が取り柄の暴れん坊将軍のようじゃのう。」
壁にある大きな葵の御門の旗を背にして、頭巾を被った老人が座している。この部屋は和室だった。老人の前には簾があり、顔はよく見えない。
「理事長の顔ははっきりしないけど、威厳に満ちた感じがするわね。それにどこかで見たことあるような、ないような?」
「理事長、吉宗ちゃんを連れてきたよ~。ご褒美くれるよね~?」
「よくやった。そうじゃな。ならば、吉宗の左乳を軽く蹂躙することを許して遣わす。」
「わ~い、これで合法的に犯すことができるよ~、ありがと~!モミモミ。」
「バカなこと、許してるんじゃないわよ、おたすけえも触るんじゃないわよ!」
「冗談じゃ。ようこそ、幕張大学附属、通称幕附高校へ。ワシが理事長の徳川じゃ。」
「徳川?って言ったらアタシの親族なのかしら。」
「何も聞いとらんようじゃな。ワシは徳川宗家の当主じゃ。そんなことより、ここに来てもらったのは他でもない。徳川吉宗に将軍宣下を行うぞい。」
「はあ?じいさん、いったい何血迷ってるの?あっ、わかったわ。ボケが始まったから、アタシに介護してくれって言うのね。そんなことならお断りよ。」
「ボケてなどおらんわ!ここの生徒会長、通称『征夷大将軍』つまり先代将軍は本家の者、お前の親戚だったのじゃが、留学することになった。その後釜として将軍になるんじゃ。この高校では生徒会長の権限が巨大で、将軍と呼ばれていたが、他方、責任も極めて大きいぞ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなり生徒会長、じゃない将軍とか言われても。アタシ、今日転校してきたばかりなのよ。この学校のことなんて、何もわからないのよ。」
「心配いらん。そのために、大岡H前忠助平がおる。吉宗の左乳になるであろう。極めて脆弱な乳の足しにはなるじゃろう。」
「理事長、あたしは右乳にもなりたいよ~。」
「苦しゅうない。よきに計らえ。」
「勝手なこと言ってるんじゃないわよ!」
「但し、巷で将軍であることを自ら名乗ってはならん。将軍は市井で正体を知られてはならないというのが、キマリじゃ。どのクラスに所属しているのかは、一般生徒には知られておらぬ。先代将軍もそれを守っていた。生徒会室と理事長室のあるこの校舎以外では、一般生徒として活動すること!例外も多少はあるが、それは忠助平に聞くがよい。そしてここからが肝心じゃ。吉宗自身もわかっておろうが、そなたはある重大な使命をすでに背負っておる。将軍として活動しながら、それを果たすことじゃ。さもないと、おぬしの左の乳は永遠に忠助平に支配、蹂躙されまくるであろう。」
「そうだよ、吉宗ちゃん、いや上様。モミモミ。」
「罰ゲームはすでに受けてるけど。って、やめなさいよ!」
「いや忠助平は溜まっておるんじゃ。胸の開放はすべてを捧げることと同義じゃからな。」
「ちょっと待ちなさいよ。それじゃあ、アタシには何のメリットもないじゃない。それなら将軍なんかやらないわ。」
「将軍にならないなら、転入は認めんぞ。さらに重大な命令を果たせなかった時点でソッコーで退学となる。それでも良ければ好きにせい。でもきっと、この幕附高校にいたくなるはずじゃからのう。ワハハハ。」