【第三章】第十二部分
しばらく休憩したあと、会議用テーブルについた三人。吉宗は一般的な生徒会活動らしい格調高さを初めて体験し、少々うれしい気分に浸っていた。
「要するに、市香ちゃんは生徒会の手伝いをしたいということなのね。」
「はい、本当は役員希望ですけど、校則的にムリであればそういうことになります。腰元でも側用人でもメイドでも何でもいいです。」
「市香ちゃんの気持ちはわかるけど、アタシは大政奉還した身。もはや実権はないわ。」
「大政奉還のことですね。お市は登校してなかったので、後でよく調べました。吉宗様は将軍の地位を降りてないから、将軍のままなんです。学園を操る実権はあくまで実権ですから、校則上のものではありません。要は取り返せばいいのです。」
「そんなに簡単な話ではないわ。一度失った信頼を取り戻すのは容易ではないわよ。もはや誰もアタシの言うことを聞いたりしないわ。」
「そうであれば、命令を聞くように仕向けるんです。」
「そんな方法があるんなら、市香ちゃんを生徒会書記に登用してあげるわ。」
「どちらかというと、腰元の方がいいのですが。クネクネ。」
腰をなまめかしく振っている市香。吉宗は小さなリスを見ているような気分になった。
「う。まあ考えとくわ。」
「それなら交渉成立です。入ってきて。」
ゆっくりと生徒会長室に足を踏み入れた男子。手には何も持っていないが、覚悟を持ち込もうとしてい様子が吉宗にははっきりと分かった。
「布切れ王子、じゃなかった渡心御台!?」
「こちらから入るのは初めてだったっけ?いつもすぐ隣から見ているけど、こちらに来てみると、視点が違うから違った風景に感じるね。実に不思議なものだね。当たり前の感想を述べ続けるのも野暮だから、結論を言ってしまおう。ボクと市香を生徒会に入れてくれ。」
「「・・・。ええっ!」」
吉宗とH前が同時に驚愕を生徒会長室に共鳴させた。
「できればボクは副将軍がいいな。市香のことはそちらの都合のいいようにすればいい。」
「ちょ、ちょっと混乱してるから、頭の風通しをよくするわ。」
吉宗は自分の頭をH前の胸にこすりつけて、グリグリとやった。
「まさかの上様からの逆セクハラ、き、気持ちいい~!」
H前は吉宗の頭を抱え込んで、自分の胸に押し付けて、悶えている。軽い快感が吉宗の思考整理を促進させた。




