【第三章】第十一部分
市香は、自分で『おわす』と言うほどの尊大さと威厳を前面に出している。端的に言えばけんか腰である。H前との身長差視点では、下から見上げている恰好であるが、上から目線オーラを感知したH前。
「御台くんの妹?たしかに目元が似てる~。なんだか気分を害された感じがする~。でも中学生が上様に何の用~?」
「お市は、生徒会に入りたいの!」
「はぁ?ここは高校の生徒会なんだけど~。どう考えてもムリじゃね~?」
門前払いシフトのH前だが、かなりの警戒心が溢れ出ている。
「正式な役員でなくてけっこう。腰元とか腰元とか腰元とか。腰に突きたいの!」
「突きたいってやばくね~?」
「ならばやってやるよ。突き、突き、突き!」
市香はH前の眼前で、腰を前後に激しく揺さぶっている。
「お市を採用しなかったら、月に向かって、お尻お仕置きよ。バンバンバンバン!あは~ん。」
赤ら顔になった市香は自分のお尻を胸元から出したムチで叩いている。ムチの取っ手は三つ葉クローバーを象っている。
「こやつ、自分で自分を折檻してよがってるよ~。すごくヤバいよ~。」
そこへ吉宗がトイレから帰ってきた。ネーチャーコールミーの直後で、精神は外部刺激に対して無防備な状態である。
「お市の将軍様!」
市香は吉宗に抱きついて右胸を揉んでいた。
「H前、セクハラやめなさい!あれ?右側だわ。おかしいわね。」
吉宗の大脳には快感よりも違和感が伝達されていた。
ポカンと口を開けて呆けているH前の顔が吉宗の目に映った。
「こいつはH前じゃないわ。じゃあいったいどこの誰?」
「将軍様、お市を助けてくれてありがとうございます!モミモミ。」
吉宗は少し目線を下げて、自分の胸元にいる市香を凝視した。
「その顔、どこかで見たような。あなた、渡心御台の妹さん?」
「覚えていて頂いて光栄です、渡心御台の妹、市香です。お市とお呼びください。お市の将軍様!モミモミ。」
「もう許せないよ~。上様の胸を凌辱する権利はあたしだけのものだよ~~!!
H前が吉宗の左胸凌辱バトルに参戦した。
「こら、ふたりとも止めなさいよ!はあはあはあ。」
やっとのことで、市香とH前を引き剥がした吉宗はすっかり上気している。
不思議なことに、喧騒の中で、吉宗は新たな安心感を得ていた。たとえセクハラであっても自分への真正面からの好意は人間を暖かく包み込むものである。




