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【第三章】第八部分

「これは多分、回復魔法だわ。でもアタシの魔法はあくまで倹約、つまり病状悪化を軽減しただけ。本質的には妹本人が自力で治りたいと思わないとダメだということは明確にわかるわ。この子に自分で治す気がないとおそらく効き目はないわね。」

そう言った瞬間、吉宗の瞳が白く光った。

吉宗は眠っている御台の妹に厳しい表情で話しかけた。

「アタシは将軍。なりたくてなったわけじゃない。なるしかなかった。選択肢は生まれた時はあった。でもお姉ちゃんたちがいなくなって、お鉢が回ってきたの。将軍になるしかないからなったの。これってどれぐらいツラいことがわかる?世の中のトップに立つ将軍の責任の重さには時として押しつぶされそうになるわ。でもそんなことより、自分の進むべき地図を描くのが自分じゃないってこと、これが果てしなくツラいのよ。自分の体なのに、何ひとつ自分の意思で動かせないのよ。あなたはそこで横たわって、重い病気かもしれないけど、いつか自分の足で踏み出すことができるわ。それがいつ来るかは自分の気持ち次第よ。魔法はただのサプリメント。補助輪は主役にはなれないわ。自分を動かせるのは自分だけよ。・・・。あれ?今のアタシの身の上話って何?夢で見たことをアタシの脳が記憶してたのかしら。何でも覚えてしまうって罪ね。じゃあ、あとはよろしく。」

吉宗が立ち去ったあと、眠っているはずの妹の目に光るものがあった。

吉宗は御台家から静かに退出していった。自力での病状回復期待という残り香が少し吉宗の気持ちを揺らしていた。


御台とH前はネコ将軍の騒ぎが落ち着いたところで戻ってきた。

妹はすでに目覚めていた。ぱっちりとした双眸で兄を見つめている。

「起きてたのか。具合はどうだ?あまり調子がよくなければ病院を変えようか。セカンドオピニオンを聞くという手もあるぞ。」

「お兄ちゃん、病気って、治してもらうものではあるけど、自分が頑張らないとダメだよね。」

「それはそうだけど、ムリはしなくていいぞ。お兄ちゃんが何とかしてやるからな。」

「でもお兄ちゃんが何とかって、特進クラスへの進学のことでしょ。それはいいよ。自分の力で何とかするよ。」

「そんなこと言ったって、その体じゃ十分な勉強ができないだろう。いやその前に出席日数もほぼ限界だろう。」

「お兄ちゃんはいつもそうだよ。お市のことを信用してないから、そんなことになるんだよ。お市を信じてないお兄ちゃんの言うこと、やることをお市が信じられるはずがないじゃない。もうお市のことは放って置いてよ。ここから出て行って!」


こうして勉強会は突然の終幕を迎えた。


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