表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/85

【第三章】第六部分

H前は御台が席を外すのを待っていたが、なかなか動かない。

「仕方ない、ベタな作戦を実行する~。」

心の中で実行宣言をしたH前。

「喉が乾いた。ジュースおくれ~。」

「そうだね。これは気が利かずに失礼したよ。」

御台はそう言って部屋を出た。わりと事務的な態度に、微妙に落胆するH前であった。

少し首をまわして、変な気持ちを振ってから、H前は吉宗にラインでメッセージを送った。

「つ、ついに来たわ。超速で、この家に入るわよ。」

御台家の真ん前に十二単で待っている吉宗。携帯用の椅子に座っている。

「ママ、あれ何?」

「見ちゃダメよ、あんな人に付いて行っちゃ危ないからね。」

一般民家の前で十二単が堂々と座っていれば、不審者認定は極めて容易であり、この母子を始め、近所の人たちが集まって、吉宗を指差していた。

「なんだか、回りが騒がしいわ。将軍が上洛すると下賤な者は跪いて注目するのね?」

注目はされていたが、跪く人は当然不在である。

「上様、何やってるの~。渡心君が戻って来ちゃうよ~。」

「すぐ行くわ!」

玄関のドアノブに手をかけて、ドアを開いた瞬間、吉宗の目に、御台の背中画像が刺さった。御台が妹の部屋に戻る瞬間だった。

「ヤバいわ!」

慌ててドアをクローズした吉宗。

「あれ?今玄関先に誰かいたような気がしたけど。」

御台は数秒間ドアの方に視線をフォーカスしていた。

「何でもないな。外で人の声がしてたけど、勘違いしたようだな。」

御台はすぐに妹の部屋に戻った。

「はあはあはあ。失敗を寸止めできたわ。さすが、アタシ。」

失敗したが、自画自賛の吉宗。ポジティブな解釈である。

「困ったわ。作戦失敗よ。これで布切れ王子が次に部屋を出るまで時間がかかりそうだわ。でも次の作戦、ゲ剤よ。これをジュースに混ぜて、布切れ王子に飲ませるのよ。」

「上様、ゲ剤って、ゲスの発言っぽいよ~。要は毒を盛れというのか~?そういう悪だくみって、結果的にあたしが飲むことになるというのが、オチだよ~。第一、正義の味方の大岡H前が犯罪者というのはNGだよ~。」

「それもそうねえ。失敗確率、高いかもねえ。」

そんなやり取りをしている最中に、家の外が騒がしくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ