【第三章】第四部分
吉宗は教室に行ったが、そんな重過ぎるミッションがこなせるわけなく、手ぶらで生徒会長室に戻ってきた。
「こうなったら、賄賂を使うしかないわ!」
「賄賂が真面目な渡心君に通用するのか、大いに疑問だけど~。隠れてコソコソ渡しても受け取らないと思うよ~。」
椅子に座って眇めた表情のH前。賄賂を否定するあたりは、名奉行大岡H前らしい。
「大丈夫よ。賄賂って、白昼堂々と渡すものなのよ、こんな風に。ガバッ!」
吉宗は両腕を鶴の羽根のように広げて、H前を大ハグした、それもH前の顔面に胸が当たるようにした大サービスぶりである。
「うはうはうはうは~!こ、これが、夢にまで見た、上様の両チチハグ!もう死んでもいい~。バタン。」
「成敗してやったわよ。これでH前はアタシの奴隷と化したわ。失ったモノは大きかったけど、しっかり代償を頂くからね。それとひとつ条件があるわ。アタシはどうしても将軍装束でないと困るのよ。」
「それは大丈夫だよ~。万事、あたしに任せてよ~。」
御台の頭の中では、吉音が退学の危機にあったことを、吉音は知らないことになっており、吉宗が御台の家に行くというのはあまりに唐突なことであった。
そこでH前は御台に対しては、こんな説明をした。
「徳田さんは日本史の勉強が苦手で、教えて欲しいが、自分で頼むのはプライドが許さない。だからあたしに賄賂をよこして、代わりに勉強会に行って来いってことだったよ~。あたしが勉強したら徳田さんに教える手筈なんだよ~。」
「間接話法の応用かな?それで徳田さんの学力向上に繋がるのかなあ。でもいいよ。少しでも徳田さんの役に立つなら。」
「ありがとう~。それと日本史の勉強を盛り上げるために、平安貴族コスをして行くからね~。」
「なんか派手そうだけど、別に構わないよ。」
こうしてけっこう無理のある勉強会が無事に成立して、平安貴族コスのH前が御台の家に行くことになった。




